□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年6月25日発行 第453号 ■ =============================================================== 日本の大手メディアに少しでもアルジャジーラの気概があったなら =============================================================== アルジャジーラというカタールの衛星放送局がある。カタールの首長ら が支援して1996年11月に設立された自称「公正で政治的圧力を受け ない中東で唯一の報道機関である」という。 その評価については、反米、親アラブという見方がある一方で、欧米の メディアが米軍に組み込まれて戦争報道を繰り返す中で、唯一真実を伝え 続けたメディアとして存在価値を示したことも事実だ。 私の体験的意見を言えば、自衛隊のイラク派兵違憲訴訟を始めたとき、 「日本政府はイラク戦争を支持したが日本国民は決してそれを認めない者 が多くいることを世界に発信して欲しい」と伝えたら、それを直ちに報道 してくれた事があった。その行動力を高く評価している。 そのアルジャジーラのムスタファ・スアグ報道局長(65)に朝日新聞 の石合力(いしあいつとむ)中東アフリカ総局長がインタビューしていた。 その記事が6月19日の朝日新聞別冊GLOBEに掲載されていた。 スアグ氏はアルジェリア出身。大学教授から記者に転じ、英BBCのアラ ビア語放送、アルジャジーラのロンドン支局長などを経て昨年6月からニュ ース部門のトップである報道局長の職に就いたという。 チュニジアからエジプト、そして中東各国に波及した「アラブの春」を 伝えようとした時の、独裁政権との戦いを次のように語っていた。 「・・・(中東の独裁政権がアルジャジーラが民衆革命を煽っていると 批判した)理由は簡単だ。彼らは自国民を無知だと信じ込み、国営放送を 自分の政府、特に大統領や首相のプロパガンダの道具として使ってきた。 アルジャジーラは視聴者の知る権利を信じ、プロフェッショナルな手法で、 出来る限り真実に迫ろうとしてきた・・・(これら)政府は当然、怒ること になる・・・」 そうして、その後にスアグ氏が語る次のような権力側の弾圧とその抵抗は すさまじい。 「リビアでは、カメラマンが殺され、数人が拘束された。エジプトでは政府 が支局の閉鎖を命じ、記者から記者証を取り上げ、拘束した。記者は殴られ、 支局の機材は壊された。エジプト政府の管理下にある衛星ナイルサットから 完全に排除された。我々は放送の周波数を頻繁に変えたり、我々の放送を流して くれる衛星を探して交渉したりと、様々な試みを続けた・・・」 私が感動したのは以下のメディア魂を語る部分だ。 アルジャジーラがなければ「アラブの春」はなかったのではないかと聞かれた 時の返答部分である。 「そうだとも、そうでないともいえる。我々は、自由、民主主義、人権が重要 であることを人々に認識させた。そして世界で何が起こり、いかにして人々が 自分たちの権利を求めているか、について報道した。自由と人権を享受し、民主 的な社会を持ちたいという中東各国の人々の渇望に応えたと思う。 革命が始まった時、人々は自分たちの声がアルジャジーラを通じて世界に届き、 彼らの行動が映像として報じられている、と感じただろう。タハリール広場で 抗議デモをしていた人々は、自分たちの姿が映像として伝わることで、自分たちが 『守られている』と感じただろう。映像は、治安部隊による虐殺行為を防いだ。 アルジャジーラが革命を始めたとか、たきつけたといわれれば、それは違う。 我々は革命を企てたり、人々に抗議を求めたりする組織ではない。我々の仕事は メディアであり、メディアは社会的責任を負う・・・」 見事なメディア論だ。 日本は中東に比べはるかに安全で民主的だ。その日本においてなぜここまで メディアが権力側に立ち、ジャーナリズム精神を忘れてしまったのだろうか。 日本の大手メディアにこのスアグ氏の気概が少しでもあったなら、ここまで 日本の政治も堕することはなかったと思う。ここまで日本国民が無気力になり、 ここまで日本が絶望的な国になることはなかったと思う。 この国のメディアの罪は深い。 了

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