□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年6月23日発行 第449号 ■ =============================================================== ウィキリークスに関する読売新聞の特集記事から見えてきたもの =============================================================== ウィキリークスについて私が書いてきた事が読売新聞の目にとまったわけ ではないだろうが、6月23日の読売新聞が「米公電暴露 現状と問題点」と いうほぼ1ページ全面を使った特集記事を掲載していた。 5月4日の朝日新聞の特集記事につぐ日本の大手メディアのウィキリークス に対する特集記事である。 そこには読売新聞の複雑な立ち位置が見事に現れている。 いや、読売新聞に限らない。この国の大手メディアに共通するジレンマが そこに凝縮している。その意味で見逃すことの出来ない重要な記事なのである。 朝日の特集記事の場合もそうであったが、この国の大手メディアは、ウィキ リークスの暴露した情報の圧倒的な価値を認めざるを得ない一方で、それを素直 に国民に流せないジレンマがある。 ジャーナリズムの使命を果たさなければいけないと言う使命感の一方で、権力 を敵にまわしては仕事ができないというジレンマがある。 そのジレンマの度合いは、新聞社や記者によってもちろん異なる。読売新聞は 朝日新聞より少しばかり権力迎合ということだ。朝日は少しばかり反権力を装っ ているということだ。 しかし大差はない。この国の大手メディアは、とうの昔にジャーナリズム精神 を捨て去っている。 6月23日の読売新聞はウィキリークスが在京米大使館発の日本関連公電を 現在までに約80点ネット上に掲載しているとして、それらのうちで読売新聞が 重要と見なしたものを要約して紹介している。 あくまでもウィキリークスが掲載した公電に基づいて読売新聞は記事にするのだ。 (そこがすべての公電を入手して書いている朝日と違うところである。しかし後述 するように結果的には大差はないことになる。) その上で読売新聞は、坂元隆国際部長の言葉として、次のように読売新聞の 立ち位置を明確にしている。 「読売新聞はウィキリークスに対し、直接に文書の提供を求めることはしない という立場をとっています。 ウィキリークスは文書の内容を十分精査しないまま、法的に疑わしい手段で、 無差別に内部文書を収集しているのではないかとの懸念があります。本紙は責任 あるメディアとして、このようなやり方を容認できません。ただ、情報は入手 経緯によらず、いったん公開されると独り歩きを始めます。本紙(読売新聞)では、 ウィキリークスが自らのサイトで公開したり、情報提供を受けた他のメディアが 報じたりした文書のうち、公益性があると判断した場合には内容の信憑性を様々な 角度から検討した上で報道しています。また、文書に登場した人物や機関に取材し、 反論などを聞く努力も続けています。 内部告発サイトというものの、ウィキリークスの活動は、米政府などの機密保持 体制のほころびが生んだ一種の社会現象です。本紙は今後とも節度ある態度で、 この現象に接していく方針です」 これはあくまでも読売新聞の立場だ。しかしおそらくその他の大手新聞の立場と 同じである。おそらく毎日や日経などのほかの新聞は、このようなウィキリークス 特集を組まないだろう。その能力はない。読売が彼らを代弁しているのだ。 朝日と読売という二大ライバル新聞だからこそ特集記事を組んだのだ。そして 5月4日の朝日新聞の西村陽一ゼネラルエディターの解説と、この坂元国際部長の 解説とあわせ読んで見ると、ウィキリークスとこの国の大手メディアの関係がわか る。 朝日と読売とでは、ウィキリークスの情報を独占したか、しないかで大きな違い があるように見えるが、結果的には大差はないのである。 それを私なりに解説すればおよそ次のようになる。 ウィキリークスは入手した膨大な告発情報を独自に確認して公開する能力はない。 それを行なうと後で責任問題という厄介な問題も出る。だから欧米の主要メディア に流しその主要メディアの検証能力と責任に委ねた。極めて賢明なやり方だ。 これがイラク、アフガン戦争の情報など当初は衝撃的な形で報道された。 第二弾、第三弾はどのような衝撃的な内部告発が暴露されるかと皆が注目した。 その一方でその衝撃が大きければ大きいほど政府の抵抗も強い。やがてウィキ リークスと距離を置くメディアがあらわれ、それはアサンジュの逮捕と相俟って ウィキリークス情報の公開に歯止めをかけることになった。 そんな中で公表されたのが日本関連部分に関する5月4日の朝日新聞の独占 スクープである。 朝日新聞がどのような経緯で日本関連部分の機密公電のすべてをウィキリークス から入手したかはもとより朝日しかわからない。朝日がとくに熱心にウィキリークス にアプローチしたのか、そしてその入手にカネが絡んでいるのか、それはわからない。 おそらくそのいずれでもないだろう。日本関係部分の情報の価値とその分析を正し く判断できるのは欧米のメディアではなく日本のメディアだ。だからウィキリークス が朝日にそれを依頼したとしても不思議ではない。 あるいは朝日が熱心にウィキリークスに情報提供を求めたのかもしれない。少なく とも今日の読売新聞の解説記事によれば読売新聞は進んでウィキリークスの情報 を求めてそれを書くという事はしないことが確認された。 問題はその後だ。朝日は1月末に全情報が入った小指ほどのUBSメモリーを 入手したまではよかったがそれを国民に公開する責任が生じた。その膨大な量と ともに、どこまで情報公開すべきかの判断を迫られることになった。 もちろんその判断の過程で日本政府との関係が出てくる。 だからといっていつまでも抱えておくわけには行かない。その結果が5月4日の 特集スクープ記事だ。その衝撃を少しでも和らげるために連休中の掲載を狙った と思う。 それから後の展開は私がメルマガで指摘して来た通りだ。その衝撃の大きさの割 には他紙が奇妙に沈黙を守ってきた。 そしてそれから二ヶ月半の6月23日の読売新聞の特集記事だ。 そこではっきりしたことは、ウィキリークスの情報の重大性は認めるものの、その 入手方法が賛成できないし、その信憑性が疑わしい。だから朝日がいくら独占入手し ても、それをよこせという気はない。下手にそのすべてを手にすると違法に手を染め たり日本政府の反感と反発にあう。おまけにすべてを検証する余裕もない。 そんな事をするよりも他紙やウィキリークスが公表したものを慎重に検討して、 報道に値するものだけを責任をもって報道すればよい。つまりウィキリークスの暴露 情報を無視するわけにはいかないが、それをあたかも鬼の首をとったように喜んで 大袈裟に報道することはしない、それが責任あるメディアの態度だ、というのである。 これは私は朝日に出し抜かれた他紙の負け惜しみだと思う。 しかし負け惜しみにしてはいかにも正論に聞こえるのだ。 だからこそ独占的に告発情報を入手したはずの朝日新聞も、これ以上ウィキリークス 情報を大きく報道できなくなったのだ。 その責任の大きさと政府や保守世論の反発を恐れるのだ。 しかし我々一般国民は違う。反権力のメディアや沖縄の新聞社は違う。政府が国民 に隠していた不都合、不誠実はすべて白日の下にさらされなければ政府の悪を正すこと はできないと言う立場である。 だから私は言っているのだ。朝日は一刻もはやくその情報を国民に返せと。 自らがそれを出来ないならウィキリークスにそれを伝え、ウィキリークスのHPで すべてそれを公開せよと伝えるのだ。 朝日は検証をしているはずだ。そのいずれもが正しい情報であると知っているはずだ。 それを自ら公表することが日本政府との関係で出来ないのであれば、ウィキリークスの 責任で公開させるのだ。 ウィキリークスが現時点で公開しているのはわずか80件だという。それだけでも この衝撃度だ。7000件を一挙に公開したらすごいことになる。心配は要らない。 朝日や読売にとってはそのすべてを検証することは何十年もかかるかも知れないが、 関心ある国民にそれを公開すれば、彼らはたちどころにすべてを解読し、その真偽を 見抜くだろう。 そもそも米国政府の外交公電である。それがウソであるはずはない。それとも 米国の名誉のためにそれを隠そうとしているのか。米国の圧力によってこれ以上 公開できないとでも言うのか。 それならなおさらだ。対米従属のあまり「国民の知る権利」さえも捨て去る日本の 大手メディアであれば、メディアなど要らない。国民の手で情報公開を進めるだけだ。 最後に読売新聞の特集記事の中のもっとも注目すべき箇所を書いて置く。 読売新聞は書いている。日本の外務省はウィキリークスのサイトを毎日確認して おびえているという。いかにウィキリークスの情報が凄いかということだ。いかに 外務省が国民に知られたくない外交をしてきたか、ということだ。 了

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