□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年6月3日発行 第385号 ■ =============================================================== これが小泉元首相の脱原発論である! =============================================================== あれほど露骨に菅首相の続投を主張し続けてきた朝日と毎日が、 一夜明けて菅首相の辞任を社説や論説で言い出した。 権力者が辞任を口にしたら終わりという事である。長年政治を見 てきた朝日も毎日もそれをよく知っているということだ。 どのように菅首相が釈明しようと、一日でも長く首相の座にしがみ つこうとしても、もはや菅首相は崖を転げ落ちるように急速にその 政治的指導力を失っていくだろう。 政治報道の関心はまったく異なる局面に移る。民主党の新党首選び であり与野党の政権争奪であり解散・総選挙と政界再編である。 菅首相の何が悪かったのか。 それはもちろんその政策において国民を失望させたからだ。 しかし明確に脱原発宣言をしなかった、できなかったこともまた 大きな原因の一つであると私は思っている。 そのことについて私は5月29日のメルマガ第371号で、菅首相 に小泉元首相のような脱原発の演説ができればもっとサミットで活躍 できただろう、と書いた。 すなわち小泉首相は5月28日に久し振りに地元横須賀で講演をし、 そこで脱原発をぶち上げた。 私はその変わり身の早さに感心させられ、その講演内容をもう少し くわしく知りたかったが、わざわざ自分で調べる労をとらずにやり過 ごしてしまった。 それから数日たって、偶然にも発売中の週刊新潮6月9日号がそれを 報じてくれた。 「小泉純一郎元総理が語った『脱原発』への道」という見出しの特集 記事は、次のように、週刊新潮の解説づきでその演説を報じていた。 少しながくなるが紹介したい。カッコ内は演説の言葉であり、それ 以外は週刊新潮の解説部分である。 ・・・社会の格差を拡大した元凶と言われる一方で、小泉元総理の 人気がいまだ衰えを知らない事は事実だ。5月28日に行われたその 講演も、立ち見が出るほどの盛況ぶりだった・・・500人以上の聴衆 で埋め尽くされたホール。登場した小泉氏はグレーのスーツにさわやか なブルーのネクタイという出で立ちである。講演時間は約50分。 「食育」に関する大会ということで、まずは食事や健康についての考え 方を披露し、「ノドが腫れて何も通らないとき、食事療法の先生に聞い たら、ご飯を甘くなるまで噛みなさいと言う。噛めば噛むほど甘くなる んです。便通までいいんですよ。この上ないんですよ。こんなことアレ だけれども」などと、笑いを交えながら会場を盛り上げる。 そして講演スタートから30分が過ぎた頃、「震災」「原発」へと 話題を移した。 ここからが今日のメルマガで紹介したい講演要旨だ。 「今、震災で多くの方々が困難に遭遇し、頑張ろう日本と不屈の精神で 立ちあがろうとしています。日本のこの悲惨な津波、地震、原発の状況。 これは確かに大ピンチなんですけれども、逆に発想を変えて、このピンチ を我々は乗り越えて行くんだという姿を世界に見せなきゃならない。 チャンスを変えなきゃならない時期だと私は思います」 では今後どうすべきか。 「自民党政権時代においても原発の安全性を信用して推進してきま した。過ちがあったと思うんですね。専門家の間でも意見が分かれて いた。そして、原発が安全かというと、必ずしもそうではない」 とした上で、次のように「脱原発」を提唱したのだ。 「これからはもう、この原発をね、更に増やしていくことは無理だと 思いますね。いかに原発への依存度を下げていくか。安全対策をしっかり やって、住民の理解を得た。そういうものについてはゼロにするという わけにはいきませんから、これに対してどう安全対策を取るか。また、 危険なものについて廃炉にしていくか。そういうことを我々が進めていか なければなりません」、 それは決して不可能ではないと元総理は説く。 「2年前ですか、1バレル150ドルにもなった。しかし、パニック は全然起こらなかった。なぜか。30年前の学習効果があるんです。 石油危機の当時アラブへの依存度は70%を超えていた。それから備蓄を した、省エネ対策をした、代替エネルギー開発をした。おかげでアラブに 対する依存度は70%から40%に減りました。これをさらに下げていく 学習効果。日本人は賢明です」 「福島原発1基の電力供給量は、東京23区全部の面積を、太陽光発電 にしてもまかなえない、と言う人がいますけれども、これが本当か、と。 原発推進論者が太陽光にさせないために言っているんじゃないかという 疑いもあるんですけども」 そこで会場はドッと笑いに包まれる。身振り手振りに加え、笑いを織り 込みながら聴衆をひきつけていくその姿は、現役時代を彷彿とさせるもの だった。 「原発への依存度を下げていくためには、ますます自然エネルギーの 促進開発をしていかなければならない。これを世界が、フランス、アメ リカ、ロシア、中国、インド、原発推進している国が倣うかもしれない。 日本はどうしたらいいのか。外国が倣うような、そういう自然エネルギー の開発促進に力を入れなくてはならない。日本国民なら、世界に先駆けて 様々な自然エネルギーの開発ができる、と思っています」 さらに続けて、 「世界が注目しております。この大惨事、地震と津波と原発事故という 三重苦をどのように日本から克服するかを。このピンチを、我々はチャン スと思って頑張っていかなければならない」 そう話した小泉氏。当初予定されていた40分を過ぎても、明治維新 や戦争について触れながら「日本人の立ち上がっていく精神」を熱く語り 続け、最後は万雷の拍手に送られて会場を後にしたのである・・・ 総理を退き、国会議員を退いた元政治家の無責任な大づかみな話だと いう事はたやすい。 しかし、菅首相に求められていたのはこのわかりやすい脱原発宣言では なかったのか。 その週刊新潮の記事はこう締めくくっていた。 ・・・そういえば今回の講演終了間際、小泉氏の口からは、「いつ自分 の活躍する舞台が用意されるかわからない。そのために、常に努力をして いかなければならない」、という、気になる発言も飛び出したが・・・ 私が5月31日のメルマガ第376号で予言したとおりだ。小泉元首相 が動き出す。 もはや脱原発という意味で私と小泉氏の考え方は同じだ。 日米同盟の是非について小泉元首相の考えの誤りを追及して行きたい。 小泉元首相が動き出せば私の血が騒ぐ。 了

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