□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年5月23日発行 第354号 ■ =============================================================== 好対照なメルケル首相と菅首相の原発政策 =============================================================== 今度のサミットは、再生可能エネルギーの開発や原子力発電の 安全性を高めることの重要性がことさらに強調される一方で、脱 原発については一言も触れられることはないだろう。 そういう見通しを、私は昨日(5月22日)のメルマガ第352号 で、毎日新聞の記事に基づいて書いた。 議長国のフランスや核大国の米国との協調を重視し、ドイツの メルケル首相もサミットの場では脱原発に固執しないだろうと 書いた。 その限りではメルケル首相と菅首相は来るサミットでは同じよう な立場に思える。 しかしメルケル首相と菅首相の間には原発政策において決定的な 違いがある。 その事を今日(5月23日)の読売新聞の記事が教えてくれた。 メルケル首相は5月21日の記者会見で、脱原発を2022年まで に図る方針を明らかにしたという。 福島事故を受け脱原発を急ぐ方針はすでに明らかにしていたメル ケル首相であるが、具体的な時期の言及に踏み込んだのは初めてだ。 6月中旬までに原子力法を改正してそれを盛り込むという。 すなわちサミットの合意がどうであれ、ドイツは独自に脱原発を 進めるということだ。 これと対照的なのが菅首相の原発政策である。 彼は5月8日、突如として浜岡原発の停止を中部電力に要請した。 誰もが脱原発の方向に舵を切ったと思ったが、その後の動きは不明だ。 それどころか浜岡原発の後のわが国の原子力政策については、何も 語らなくなった。菅政権としての合意をつくる気配はまったくない。 メルケル首相と菅首相の原子力政策の違いはどこからくるのか。 それは信念に裏打ちされた確固たる政策があるかないかだ。 メルケル首相は筋金入りの脱原発主義者であるという(5月22日 毎日)。 もちろん政治家だから世論の動きには左右される。それでも信念が あるから決断する時はする。今度の決定も、与党内からの批判もある が脱原発を進めるという方針は崩さなかったということだ。 ひるがえって菅首相はどうか。 彼には原発についての確固たる考えはないことはもはや明らかだが 問題は原発政策だけではない。 日米同盟も、増税も、公務員改革も、人権も、なにもかも、野党議員 として自民党政権の政策を批判していた時と、権力を握った後では、 大きく立ち位置を変えた。 権力を握れば責任がともなう。これは菅首相の決まり文句だ。 しかし、そんな事はない。 政治家としてやりたいことがあるのであれば権力を持った時こそそれが 出来るのだ。審判は国民に委ねればいいのだ。 それが出来ないということは政治家としてやりたいことは何もない ということだ。権力の座に居座り続ける事が最終目的だと言っている ようなものだ。 権力を維持するために最善の策を世論の風向きを見て決める。 日本がわけのわからない国であることは今に始まったことではないが、 菅首相のこの一年間でそれが加速した。 日本は本当にわけのわからない国になってしまった。 了
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