□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年5月23日発行 第355号 ■ =============================================================== 「原発を作ったのは国民みなの責任だ」という詭弁 =============================================================== にわかに浜岡原発を言い出して、いまや反原発主義者に豹変した かのような毎日新聞の山田孝男専門編集委員である。 にわか反原発主義者という意味では私と全く同じであるが、やはり その考え方は違う。 5月23日の毎日新聞「風知草」は、19日の毎日新聞夕刊に 掲載された小学校6年生の次のような手紙の引用からはじまる。 「僕のお父さんは東電の社員です。原発を造ったのはもちろん 東電ですが、きっかけをつくったのは日本人、いや、世界中の人々 です。原発を造ったのはみんなです。その中には、僕もあなたも入 っています」。 そして山田編集員は「その書きっぷりに感心」して次のように その論評で訴えている。 原発神話はいまや崩れた。今度は電力浪費神話を打ち砕く番だ。 電気を湯水のように使い続けなければ我々の生活は文明以前の暗黒 に突き落とされるわけではない。繁栄とはなにか。発展とはなにか。 幸福とはなにか。それを考えて原発優先政策を考え直す時だ、と。 このことについても異論はない。 しかし、彼が言っていることはどこかうそ臭い。 そしてよくその論評を読み返して気づいた。 それは彼が感心し、冒頭で引用した小学生の言葉が間違っている からだ。 原発をつくったのはみなだ、というのは間違いである。 原発に反対する国民は多くいる。しかし彼らは権力者の決めた事 に従わざるを得ない。決して原発づくりに加担しているわけではない。 このことはすべての政策について言える。 我々多くの一般国民は直接政策に関与できるわけではない。 どんなに不満があっても国家権力が決めた政策に従わなければ社会 的に生きていけない。消極的に賛成するしかないのだ。 だからこそ政策決定権を持つ政治家や官僚ら支配体制側にある者 たちの責任がことさらに問われなければならないのだ。 それを一律にみなが政策をつくったなどというのは、権力という ものの強さ、怖さ、卑劣さを知らない子供には言えても、世の中の仕組 みを知っているまともな大人が感心するようなものではない。 山田委員がそれを知らないはずはない。 それに多くの国民は電力をむやみに浪費しているわけではない。 かりにそうであっても社会の風潮はそれをつくる権力者とメディアに よって左右されるのだ。 かりに国民が一億総白痴化になったり、電力浪費社会になったりしたと すれば、その責任は権力者とそれに加担するメディアの責任である。 それも山田氏が知らないはずはない。 要するに山田氏の論評は権力の内に身を置いてきた者の格好をつけた 論評でしかないのだ。 権力批判に身を置く私の発言とは似て非なるものである。 了
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