□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年5月18日発行 第342号 ■ =============================================================== 政権交代後も弱者が救われないこの国の政治の貧困 =============================================================== 福島原発所で作業員に犠牲者が出た14日、菅首相の第一声は、 原因が放射能被害かどうかしっかりと確かめてもらいたい、だった。 作業員が過酷な労働条件下で働かせられていることはすでにさん ざん報じられてきたことだ。 それが過労からくる死亡であることは容易に想像できるのに、 放射線の犠牲者でなければひとまず安心だ、といわんばかりの菅首相 の第一声に、私は菅首相の保身を見る。 放射能汚染の被害で死者が出たら責任を取らされるとの思いが とっさに頭をよぎった違いない。 しかし、これから書くことはそのような菅首相の批判ではない。 5月17日の報道に、原発災害にかかわる活動に派遣される自衛隊 員の手当を一日4万2000円とする方針を政府が固めた、という記事 があった。 今回の災害派遣活動に携わる自衛隊員の手当てが少ないという声が 自衛隊応援団の中から出ていた。 それに応えた政府決定だろうが、一斉に引き上げられる諸手当の中 でも原発敷地内での活動の手当ては格段に高くするという。 手厚くするのはいいだろう。原発敷地内の作業は放射能汚染の危険が 高い。 しかし、真っ先に手当てを講じる対象は、もっと危険な状況で、 もっと過酷な仕事をさせられている派遣作業員ではないのか。 私は犠牲になった作業員の日当を知らない。労働災害補償がどうなっ ているか知らない。 私が知っている事は自衛隊員の手当てが大幅に引き上げられたという 事だけだ。 自衛隊は一つの巨大な国家組織である。イラク派遣を契機に危険な 状況に派遣される隊員への処遇は、随分とよくなって来た。 それは自衛隊員が国家公務員であるからだ。家族を含め100万人 以上の数を持つ一大組織であるからだ。 それに比べ、何の組織も持たない原発事故作業員は、誰も本気でその 処遇を考える者はいない。究極の弱者である。 政権交代が起きて期待されたことの一つは、このような弱者の国民に 対して配慮が注がれることではなかったか。 今なお絶対的弱者は見捨てられたままだ。私はそこにこの国の政治の 貧困を見る。 了
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