□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年4月25日発行 第295号 ■ =============================================================== TPPの参加先送りを報じる毎日新聞記事のいい加減さ =============================================================== いくら新聞記事の質が落ちてきているといっても、TPP参加 先送りを報じる4月23日の毎日新聞の記事ほどいい加減な記事 はない。 玄葉光一郎国家戦略担当相は22日の記者会見で、TPPへの 交渉参加見送りを示唆したという。 ところがそれを報じる毎日新聞のその記事は、先送りの背景には 「東日本大震災の対応に追われ、政府内で実務的な作業が進んで いないことがある」と書いている。 こんな馬鹿な記事はない。 TPP参加は「平成の開国だ」とまで言って菅首相が政権を賭けた 最重要政策だった。6月末までに結論だすと公約したほど重要な政策 のはずだ。いくら大震災の対応に追われているからといって、その他 の仕事が何もできないということはありえない。許されない。なぜ その事について玄葉担当相を追及しなかったのか。 しかも大震災の対応に人手がとられているというのは嘘だ。 毎日新聞はその記事で書いている。経済産業省で通商政策を担当 していた西山審議官らは原子力安全・保安院や資源エネルギー庁に 異動し、TPPを担当する人材不足に陥っている、と。 こんな馬鹿な記事はない。 TPPがそれほど重要なら、なぜTPP参加の結論を出す6月末 までとどめておかなかったのか。しかも通商担当をしていた者を、 なぜ関係のない原子力安全・保安院に異動させたのか。 我々はついこの間までTPPを担当していた西山審議官に、毎日の ように原発事故の説明を聞かされていたのだ。このいい加減な人事異動 をなぜ毎日新聞の記者は追及しなかったのか。 極め付けは毎日新聞のその記事が認めている次の事実だ。 「・・・一方、(TPPを協議している)9カ国も難局にぶつかって いる。3月末から4月上旬にかけ、シンガポールで6回目となる交渉 会合が開催された。TPPは原則100%関税撤廃を目指しているが、 会合は品目ごとの関税率を巡って紛糾・・・このため当初予定していた 11月のアジア太平洋協力会議(APEC)までの大筋合意は困難と なった・・・」 これが本当の理由なのである。すなわちTPPそのものが欠陥商品 となったのだ。参加国の間で熱意がなくなったのだ。 国内からの強い反発にあって菅首相はとても6月末までに参加の決定 を出すことは出来なくなっていた。そんな中でTPPが行き詰まった。 渡りに船だ。もはや菅首相は6月末に結論を出さなくてもよくなった。 これが延期の本当の理由なのである。 なぜ毎日新聞の記者は、わかっているくせに「大震災はまっかな口実 ではないのですか」と追及しなかったのか。 実にいい加減な毎日新聞の記事である。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)