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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

そこまでして巨人に勝たせたいんか!!
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年4月23日発行 第293号 ■     ===============================================================      そこまでして巨人に勝たせたいんか!!  ===============================================================  4月22日の日刊ゲンダイに20日に行われた巨人対阪神 の試合の判定について書いた記事を見つけた。私もたまたま そのゲームを見ていたのでこの記事に目が釘付けになった。  その試合は5対4で阪神が逆転負けを喫した試合だった。 三連戦の初戦を勝った阪神は、この試合の逆転負けにより水を さされ、続く第三戦目も負けて、結局三連戦は1勝2敗で終わる 事になった。  日刊ゲンダイのその記事は、勝負の流れを変えたその第二戦 について、三度に及ぶ巨人に有利な審判の判定について書いていた。  その中でも明らかな誤審だったのは阪神が一点を勝ち越した7回 裏の阪神の攻撃の場面だ。逆転し、なおも2死一、三塁の好機で 5番のブラゼルが打った打球は高々とあがった。それを二塁手脇谷 がよろよろと落下地点に入り、そしてファンブルした。一度は グラブから飛び出した打球を脇谷は倒れこみながら捕球したが、 その打球は一旦地面に落下したように見えた。一塁審判は、やや間 を置いて右手を上げ、アウトを宣告する。  その時だ。阪神の真弓監督が怒って「落としてる!落としている やないか!!」と詰め寄った。テレビで繰り返し流されたスロー映像 を見る限り、脇谷のグラブからこぼれ落ちたボールは明らかに一度 地面に落ちている。しかし判定は覆ることはなかった。  ゲンダイの記事は続ける。微妙な判定はこれだけではない、と。 直後の8回、先頭打者の小笠原のショートへの内野安打。微妙な タイミングだが同じ審判の判定はセーフ。これをきっかけに巨人 は3点を入れて逆転した。その後の無死一、二塁で迎えた高橋由 に対する外角低めの絶好球が「ボール」と判定された。テレビ解説者 も思わず「いいボールですけどねえ」と口にしたほどだ、と。  私の年代の者がそうであるように私は野球少年だった。そして 大方の子供がそうであったように私もまた大の巨人ファンだった。 巨人が負けたゲームはテレビに物をぶつけて怒られるほどのファン だった。  その私が社会人になっていつの間にか巨人ファンでなくなった。 社会人になってしばらくはまだ巨人ファンだったと思う。それが いつしかアンチ巨人になっていった。なぜ、いつごろから、そのよう になって行ったかはわからないままだった。  そしてこの記事を読んでなんとなくその理由がわかったような気が した。私がアンチ巨人になったのは、世の中に出てだいぶ時がたって からだ。家族ができ、世の中の仕組みがわかってきたときからだ。 社会の不条理を知ってからだ。何よりも外務省という官僚組織の中に 身を置いて組織の論理の矛盾を感じて行った時期と符号するような気 がする。  その日刊ゲンダイの記事はこういう文章で締めくくられていた。  「・・・(判定は)ことごとく阪神に不利に出た・・・星野仙一元 阪神監督なら間違いなく審判団にこう声を荒げているに違いない。 『そこまでして巨人にかたせたいんかっ!!』・・・」  この言葉は、私が外務省にいた頃によく自分に言い聞かせていた言葉 と重なって見える。  「そこまでして出世したいのか」、と。  組織の中で出世できなかった不器用な者の負け惜しみと言われても 仕方がない。しかしそれは間違いなく私の思いであった。  私が巨人を嫌いになったのは巨人のせいではない。巨人を勝たせよう とする体制側の不正義に違いない。                           了  

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