□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年4月18日発行 第281号 ■ =============================================================== 敗れたり、日本の核外交 =============================================================== 原発事故の処理について日米が協力する事で一致した。その事で さらに日米同盟が深化した。4月18日の各紙は今回のクリントン 米国務長官の訪日をこぞってそう報じている。 しかし、その同じ日の4月18日の朝日新聞に、日本にとって これ以上ないほどの屈辱的な記事が掲載されていた。 その記事は、日本を訪問する直前の4月17日、クリントン米 国務長官が韓国に立ち寄った際、で李明博大統領と会談し、来年 韓国で開く第2回の核保安サミットで原子力発電所の安全問題を議題 として取り上げるよう提案し、李大統領もこれに同意した、という 記事である。 そもそも第2回の核サミットを唯一の被曝国である日本ではなく 韓国で開くことになった時点で日本の核外交は敗れていたのである が、原発事故を議題にするということを、訪日直前の韓国で米韓両 首脳が一方的に発表したということは、これ以上ないほどの日本外交 の敗北である。 福島原発事故が起きた後のあらゆる国際会議は、もはや原発問題を 避けて通れなくなった。原発事故はそれほど各国に大きな衝撃と被害 を与えたのだ。 そしてこのまま日本が弁明外交に終始しているなら、日本の国際的 地位と信用は損なわれ続けていくだろう。 事故が起きてしまったことは止むを得ない。 しかし、なぜその事故の影響を最小限に食い止める積極的な外交が できないのか。 ドイツは日本の事故を見ていち早く脱原発の方向に舵を切った。そし てその気運は欧州に広がりつつある(4月17日東京)。 原発事故を起こした日本こそ、これらの国と協力して、今後の国際 会議で脱原発の基本姿勢を訴えるべきだったのだ。 今後の原発の推進には慎重になろう、エネルギー源の多様化のための 国際協力を加速させよう、そう呼びかけることはできたはずだ。 そして、たとえ、米国との関係でそれが難しいとしても、今度の原発 事故の教訓を活かして、原発事故対策についての国際協力を、事故を起 こした日本が率先して呼びかけることは出来たしそうすべきであった。 それなのに、それを先に米韓首脳が世界に提案してしまった。 これでは日本は責められるばかりだ。被告人であり続けなければなら ない。謝罪と釈明を繰りかえさなければならない。 「敗れたり、日本の原発外交」である。 それにしても、と思う。 米韓は今度の発表について事前に日本に通報、協議していたので あろうか。 そうであればなぜ日本はその提唱国の一人として三カ国のよる共同発表 の形にするよう求めなかったのか。 もし米国や韓国が今度の発表を一方的に行なったのなら、日米韓同盟 などという言葉は死語に等しい。 日本は、原発外交だけではなく外交そのものに敗れていたと言う事だ。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)