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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

シリアにまで広がったアラブ民主化の動きの意味するもの
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年3月27日発行 第207号 ■     ==================================================================   シリアにまで広がったアラブ民主化の動きの意味するもの         ==================================================================  リビア情勢が長引くなかで、もう一つの重要な動きが加速し つつある。  それはシリアの民主化運動の拡がりである。  私はレバノンに勤務した経験から、シリアのアサド体制がいかに 独裁的であるか、そして治安警察が強固、苛烈に国民の反政府の動き を封じ込めて来たかを知っている。  その一方でシリアはいまやイランと並んで中東で唯一の反米、反 イスラエル政権である。  その大義名分があるために国民の意識が反政府運動に向かい難い。  だからシリアでは反政府運動は起こらない。  起こっても政権を打倒するところまで拡がらない。  そう私は思っていた。  だからシリアでデモが拡大し、それどころか最近の報道によれば アサド独裁体制の最大の危機にまで発展しつつある(3月27日読売) 事に驚いている。  このシリアの民主化の動きの衝撃を正しく伝える記事が日本の メディアであらわれるのだろうか。  そう思っていたところ、その第一号とも思える記事を3月27日の 東京新聞「太郎の国際通信」に見つけた。  「驚きのシリア反政府デモ」と題して木村太郎がこう書いていた。  (反政府デモが中東全域に拡がりつつある中で)私が一番驚いた のはシリアで反政府デモが広がり、治安部隊と衝突が起きていた ことだ。アサド政権は強力で容赦ない治安組織を持っている。シリア のメディアは完全に政権の支配下にあり国民を洗脳している、なにより もイスラエルと軍事的に対峙するシリアでは、反政府運動は「イスラ エルを利する事になる」という大義名分があるので、デモは起こり にくい。  それでも反政府運動が起きたのだ。シリアの反政府運動の行方は注目 される、と。  ここまで書いた日本のメディアは私が知る限りでは木村太郎が最初だ。  しかし彼が指摘しない重要なポイントがある。  それはシリアとイスラエルの本当の関係だ。  確かにシリアはイランと並んで米国、イスラエルのパレスチナ政策を 批判する国である。  イスラエルとの軍事的衝突も繰り返している。  ところがそのシリア政権が、実は裏で米国、イスラエルと手を結んで いるとしたらどうか。  実はレバノンで私はこのイスラエル・シリア内通説をレバノンの多くの 情報通から聞かされてきた。  すなわちシリアは反米、反イスラエルの姿勢を見せて自国民を欺き、 独裁体制を維持して来た。  米国やイスラエルはシリアが本気でイスラエルと敵対しない事を 知っているからこそアサド体制を容認して来た。  米国とイスラエルの最大の敵はパレスチナ抵抗組織やそれに共鳴 する反米、反イスラエル過激派が。  いわゆるテロだ。  そのテロを押さえつける事のできる政権こそシリアのアサド独裁 政権なのだ。  米国、イスラエルはアサド政権に利用価値を見出している。  アサド政権は反米、反イスラエルを掲げながら独裁政権維持に利用 している。  お互いに持ちつ持たれつである。  これである。  この内通説の真偽は、私がレバノンにいた時も今も、私は確認でき ないままである。  しかし、木村太郎のこの記事を読んで、私は再びこのイスラエル。 シリア内通説を思い出している。  木村太郎のその記事のソースは「シリアの情勢に詳しいイスラエルの 報道」である。  「シリアでは反政府運動が始まることは『ない』」と断言していた 3月11日の「エルサレム・ポスト」の分析記事まで紹介している。  もしイスラエルとアサド政権の内通説が真実であれば、シリアの反政府 デモの拡がりに一番衝撃を受けているのはイスラエルに違いない。  シリアに民主政権が打ち立てられることになれば、それは中東民主化が 完成すると言っていいほどの大きな意味を持つ。  そして中東に真の民主化政権が根付くようになると、その時こそパレス チナ問題の公正な解決に希望が見出せる時だ。  なぜならばイスラエルも米国もアラブの民衆の声を無視し続ける事は できないからだ。  そう考えて行くと、中東の民主化を一番恐れているのはイスラエルで あることがわかる。  米国は一方においてユダヤロビーに屈しイスラエルを支持し続けざるを 得ない。  その一方で民主国家のチャンピオンである米国は中東の民主化を妨げる わけにはいかない。  米国はその板ばさみに悩まされている事がわかるのである。                              了

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