□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年3月26日発行 第204号 ■ ================================================================== 大震災後も菅首相は居直り続けるのだろうか ================================================================== 大震災の後の政治状況を思い出して欲しい。 退陣を求める野党に対し、菅首相は繰り返していた。 社会保障と増税の一体改革とTPPについて6月中に決断する、と。 つまり少なくとも6月までは政権を維持する、ということだ。 そして状況如何ではその後も首相を続けるということだ。 そうはさせじと、野党は攻勢に出ていた。そして、その攻撃材料は 山ほどあった。 首相の外国人献金疑惑。統一地方選挙の劣勢。なによりも増税と TPPに対する根強い反発があった。 そんな中で大震災が菅首相を窮地から救った。 それは大震災を前にして与野党が対立している場合か、という非常 事態が起きたばかりではない。 増税とTPPの問題について6月中に結論を出す必要がなくなった からだ。 たとえば3月25日の朝日新聞が書いていた。復興対策の財源確保 が大きな課題となる。復興のための特別国債や増税など、あらゆる 議論が与野党間で必要になる、と。 たとえば中西寛京都大学教授が3月25日の日経「経済教室」で当然 のように書いていた。「TPP加入論議は延期されざるを得ない だろう」、と。 それらはその通りなのだ。 これを要するに、大震災は菅政権の6月期限を吹き飛ばしたのだ。 そう思っていたら、ついに枝野官房長官が25日の記者会見でそれを 公然と言い出した。 (税・社会保障の一体改革とTPPは)「大変重要な政治課題だが、 それ以上に今は、被災者支援、復興、原発事故への対応という、より 大きな課題に直面している。優先順位が変わってきている」、と。 果たして菅首相は大震災によって延命できるのか。 ついこの前までは私はそうなるだろうと考えていた。 政治評論家の菅政権擁護も相変わらずだった。 ところが25日の菅首相の記者会見を聞いて直感的に感じた。 菅首相は観念し始めたのではないか、と。 原発危機の深刻さの前に立ちすくみ、気力を失いつつあるのでは ないか、と。 おりから26日朝のTBS「みのもんたのサダテーずばっト」で 岩見隆夫がこう言って私を驚かせた。 政治家やジャーナリストの間では菅首相の原発対応ではダメだ、 という認識が広がりはじめている、と。 これからの政治の流れに注目したい。 原発危機は日本の政治を根底から変えることになるかもしれない。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)