□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年3月24日発行 第200号 ■ ================================================================== 国連によるリビアへの武力行使は、結束、迅速、公正がすべてだ(3) ================================================================== 原発事故の次はリビア情勢だ。忙しい。 頭が混乱するようだがどちらも重要だ。 再び今度はリビア情勢について書く。 リビア情勢が長期化の予想を呈してきた。好ましくない方向に 向かいつつある。 しかしそれは国連の武力介入が間違っていたのではない。 国連の武力介入が結束、迅速、公正の点で、理想的ではなかった からだ。 読者からは国連の武力攻撃が間違いだという意見がいまでも私に 寄せられる。 欧米の思惑による武力行使は許せない。 何があっても武力行使は許せない。 そういう意見だ。 私はここでそれらに反論するつもりはない。 自分の考えが絶対的に正しいと言うつもりもない。 歴史が判断を下すだろう。 重要な事は、如何にして平和を実現できるシステムを我々は つくれるかである。 今度のリビアのケースはその重要なテストケースである。 それは平和を唱えるだけでは実現できない。 平和のシステムをつくる事が重要なのだ。 そしてそれが出来なければ憲法9条も守れなくなるのだ。 いま我々が真剣に考えなければならないのはリビア情勢をどう解決 すればいいのかである。 カダフィ政権を復活させてはいけない。 中東はいま歴史的民主化の過程にある。 イエメンが、バハレーンが、サウディが、そしてついにシリアまでも が民主化の動きに包まれ始めた。 そのような動きの中でカダフィを居直らせてはならない。 どうすればリビアの民主化を実現できるか。 それは困難な作業だ。 米国が悩んでいる。リビアへの軍事行動にためらっていたオバマ大統領 を三人の女性が説得したという(3月21日産経)。クリントン国務長官、 ライス国連大使、パワー国家安全保障会議上級部長だ。ルワンダの大虐殺 を繰り返してはならないと武力行使を主張したのだ。 ロシアが悩んでいる。安保理決議に反対したプーチン首相と、安保理決議 賛成したメドベージェフ大統領が「最も激しいやり取り」で対立した (3月23日読売)という。 リビアへの軍事介入はそれほど困難な決断であった。 ひるがえって日本はどうか。 いくら大震災の最中だといってもこの国の指導者や官僚たちはリビアへの 軍事介入への是非について真剣に議論をする時間は十分にあったはずだ。 しかし米国やロシアのように激しい議論をした形跡はない。 あのイラク攻撃の時のように、まともな議論をしないままに大勢に従った に違いない。 私が問題にしたいのはその事だ。 リビアへの武力攻撃が正しいか正しくないか。 それは歴史の判断に委ねればいい。 重要な事はいかにして平和の敵を皆で排除するかである。 その最善の国際的システムをつくるかである。 それを真剣に考える事である。 世界に先駆けて武力放棄を定めた憲法9条を持った日本こそ、世界で もっとも真剣に議論しなければならなかったのだ。 さもなければ憲法9条は守れなくなる。 強い軍事力を持つことが最善の安全保障策であるという議論に屈服する 事になる。 リビア情勢を正しく解決できるかどうかは、国連の正念場であると同時 に憲法9条の正念場でもあるのだ。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)