□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年3月11日発行 第174号 ■ ================================================================== 朝日はおかしくなった-海賊逮捕を一面トップに持ってくる感覚 ================================================================== これは朝日新聞を毎日読んでいる私の、朝日新聞デスクたちに 対する批判である。 朝日はここまでおかしくなってしまったのか。 3月10日の朝日新聞は一面トップに、アフリカ・ソマリア沖で日本 の船(商船三井)が海賊に襲われた事件で、その海賊を日本が逮捕する 事になったと大きく掲げた。 一面トップにふさわしい出来事は他にもいくらでもあるというのに、 である。 米国がソマリア沖で捕まえた海賊4人の身柄を日本が引き受け、海賊 対処法違反の疑いで逮捕する方針を固めた、というのだ。 見出しも「海賊 日本が初逮捕へ」となっていた。 なぜこれが重要なのか。 日米同盟重視をアピールしたいのか。 2009年に制定した海賊対処法を宣伝をし、それが無駄な法律では なかった事を強調するために、はじめて適用する事を吹聴したいのか。 官僚とつるんで記事をつくるようになった最近の朝日のことだから それならわかる。 ところがその記事をよく読んでみると、どうもそうではないらしい。 身柄の引渡しや逮捕、移送の具体的な段取りは何も決まっていない という。 海賊をどこの国で裁くかについての国際的なルールはいまだ未整備だ という。 引き受け国の負担は重く、今回の日本移送について政府関係者は 「お鉢が回ってきた」と述べ、受入を拒む関係国ばかりの中で、引き 受けざるを得なかったというのだ。 移送や取調べを担当する海保の関係者は「前例をつくることになら ないか」と危惧するという。 極めつけは「官邸が急に騒ぎ出し、法務省経由でなしくずし的に東京 地検に振ってきた」と検察幹部が内情を明かす。 まさか、中国の尖閣沖不法漁船の船長を釈放して世論の批判をあびた から、今度は日本で裁くと決めたわけではないだろうな。 この海賊引き受けについては3月10日の日刊ゲンダイが次のように 書いていた。 相手はジョニー・デップ扮するスパロウ船長じゃない。無政府状態に なっているソマリアの男たちを連れてきて、わざわざ日本で裁く意味は あるのか。刑務所での待遇がいいという評判が広まったりすれば大変だ。 捕まえた米国に押し付けるのが賢明だ、と。 どう考えても夕刊タブロイド紙の日刊ゲンダイの記事のほうが天下の 朝日新聞の記事より正しい。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)