□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年3月10日発行 第173号 ■ ================================================================== 主婦年金過払い問題の深刻さ ================================================================== 年金問題に素人の私でも、今回の菅民主党政権の年金問題に関する いい加減さについてはあきれ返った。 いや、あきれ返るどころではない。これは政権交代を果たした民主党 政権の国民に対する最大の裏切りではないか。 それほど深刻で失望させられる事件である。 その事について週刊現代3月19日号の「ドクターZは知っている」 ― 主婦返金救済の理由―を引用しながら述べてみたい。 まず、この「切り替え漏れ」の問題は旧社会保険庁の時代から官僚たち は気づいていた問題であるということだ。 それなのに国民からの申請がないことをいい事に知らん振りをしていた。 届出の重要性を国民にPRしてこなかった。この官僚の責任は重い。 次にこの救済策は「ミスター年金」こと長妻昭大臣の時代に厚労省政務 三役が決めた救済策であるということだ。 救済といえば聞こえはいいが、真面目に支払った人の保険料や年金に 使われる税金を、未納者のために流用しているとも言える不公平な救済策 である。 そしてやはり最大の問題点は、この救済を、厚労省の課長通達という 簡便な手続きで処理しようとしたことである。 しかもそれが長妻氏自ら認めたように長妻大臣(当時)の政治的判断で 行なったということだ。 この点についてドクターZ氏はこう書いている。 「・・・被害者救済を早急に行なうべきなのは確かだし、課長通達は 行政機関の裁量権の範囲と見ることもできよう。しかし、行政の不手際 を謝罪したうえで、未納分をさかのぼって収められるように国民年金法 を改正すれば解決する話だ。野党の協力も得られる案件だ・・・」 まったくその通りだ。 法改正を行なう事なく裁量権を濫用して運用でごまかす。 これこそが官僚支配の悪弊である。 その典型は日米地位協定の改正をすることなくすべて運用で対応しよう としてきた外務官僚のごまかしだ。 このような官僚主権を排して、財政負担に関するあらゆる政策は法律に 基づいて公正、透明に行なう。 これが政治主導であったはずだ。 脱官僚を売り物にし、しかも脱官僚を徹底しようとして仙谷官房長官に 辞めさせられたはずの長妻昭氏が、官僚と同じ事をやっていた。 この衝撃は大きい。 しかもそれを後任の細川大臣に引き継がなかった。 官僚がそれを大臣に説明するはずはない。 一体、長妻大臣や政務三役の民主党の政治家たちは何をやっていたの だろう。 周知のとおり年金問題は国民生活にとって最も重要な政策だ。 民主党が政権交代できたのも、年金未納問題から端を発した年金制度の 崩壊であった。 それを抜本的に改めるのが民主党政権の一大仕事であったはずだ。 それなのにこの体たらくだ。 このこと一つ取ってみても、もはや菅民主党政権では何もできない ことが明らかだ。 主婦年金救済問題が深刻だと思う理由がここにある。 最後に再びドクターZ氏の言葉を引用する。 「民主党は誰にでもいい顔をしたがるが、正直者が馬鹿を見たり、おかし なえこひいきになったりすることを、行政は絶対やってはいけない。 こんな不公平なことをする一方で、社会保障のために増税しようとする のは道理に合わない・・・」 その道理に合わないことを、延命のために何があっても強行しようと しているのが菅民主党政権なのである。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)