□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年3月8日発行 第167号 ■ ================================================================== 鎌田慧氏の疑問に答える ================================================================== フリージャーナリストの鎌田慧氏は私がその意見の殆どに賛同 できる数少ない言論人の一人である。 その鎌田氏が3月8日の「本音のコラム」で前原外相の辞任に ついて「わからない」と疑問を呈していた。 その「わからない」という意味が、「辞任すべきではなかった」、 という観点から疑問を呈しているのであれば私と考え方が異なる。 その「わからない」という理由が、文字通り「わからない」という のであれば、私は鎌田氏に教えてあげたい。 鎌田氏はわからないという。どうしてこの時になってこんな話が 出てくるのか、と。 この話は知る人ぞ知る話だった。それについて西田氏が独自の調査で 揺るがぬ証拠をつかんだから追い詰めたのだ。追い詰められてあっさり 前原氏が事実を認めてしまったから問題が大きくなったのだ。 鎌田氏はわからないという。もはや何の力も、定見もない自民党が アラ探しに血眼になっているのがわからない、と。 何の力も、定見もない自民党だからこそアラ探しに血眼になるのだ。 政治は政権を取る為には何でもする。相手のあらゆる弱点を衝く。それ は野党時代の民主党も同じだ。それが権力争いだ。 鎌田氏はわからないという。わずか年5万円、合計25万円程度の 「政治献金」が「発覚」したぐらいで辞めるのか、と。 前原外相が辞めたのは5万円の政治献金ではない。その事をきっかけ に北朝鮮との過去の係わり合いが次々と追及される事をおそれたからだ。 対米従属と対北朝鮮宥和という外交定見のなさが露呈されると、自らの 政治生命が終わる、米国に見捨てられる、そのことを一番良く知って いるのは前原外相自身なのである。 鎌田氏はわからないという。どうして、菅直人首相は前原さんを説得 して留任させなかったのか、と。 菅首相は必死で留任してくれと説得したと報じられている。菅首相は 問題の深刻さをわかっていないのだ。いくら頼まれても前原外相は留任 する意思はなかったのだ。 鎌田氏はわからないという。外国からの資金がはいって日本の政治が 動かされることのどこが悪いのか。自民党は米国から資金を貰っていた ではないかと。 外国から日本の政治家が資金を貰って政治が動かされる事を認める 国民はいない。だからこそ自民党が米国から資金をもらって対米従属に 堕したことが批判されるのだ。自民党はそんな事を公式に認めるはずは ない。米国であれ中国であれ南北朝鮮であれ、政治家が、ましてや外相が、 それをやってはいけない。 金銭の多寡ではない。在日を差別する事とは別だ。在日のおばさんの 善意などという瑣末な問題にしてはいけない。 鎌田氏は最後にわかったという。 斜陽の菅内閣を守らず、「潔さを見せ、自身のダメージを最小限に 食い止めようという計算」(東京新聞3月7日)だったのか。そんな わかりやすいことだったのか、と。 これも違う。前原氏は決して潔くなかった。菅民主党政権を見限ると いうことでもなかった。出来れば外相を続けたかったのだ。菅首相をこれ 以上追い込みたくなかったに違いない。 しかし辞任せざるをえなかったのだ。事態は彼にとってそれほど深刻で あるということだ。 そのような深刻な問題を抱えながら外相を引き受け、続けていたところ に彼の甘さがある。 すべては自業自得である。 ここまで駄目な政治家とはさすがの私も思わなかった。 残念なことではあるが、すべては前原という政治家の軽さ、器量のなさ のなせる業である。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)