□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年3月8日発行 第166号 ■ ================================================================== 東京大空襲を実行したルメイ米空軍参謀総長に勲一等を叙勲した理由 ================================================================== 1945年3月10日に東京大空襲があったことは知られている。 その指揮をとったのがカーティス・ルメイという米空軍参謀総長で あること、そしてその米軍幹部に佐藤栄作政権が1964年に勲一等 旭日大受賞を与えていることは、歴史に詳しい人は知っている。 しかし、東京大空襲で10万人もの都民を殺した米軍幹部をなぜ叙勲 したの、その「ありえない」叙勲の理由については、説得力のある解説 を私は知らない。 そんなルメイ氏への叙勲について、発売中のアエラ3月14日号が 一つの答えを示してくれた。 「勲一等、47年目の真実」として、次のように書いていた。 この叙勲については二つの内部文書があるという。 一つは外務省外交資料館が保管している文書で、ルメイ氏に「勲一等」 を贈りたいという小泉純也防衛庁長官(小泉純一郎元首相の実父)から の上申に基づき、その旨を佐藤首相に助言する、外務省起案の叙勲 「請議」である。 もう一つは国立公文書館つくば分館にある防衛庁文書で、小泉純也 防衛庁長官が自ら佐藤首相に要請した文書だ。 そしてその二つの文書に、ともに添付されている共通の文書が、叙勲 の理由を記した功績調書であるという。 そこには米国空軍と航空自衛隊の間の緊密円滑な連絡調整に尽力した と書かれているという。 ところがその功績調書を読んでいくと、「おや!」と思わせる記述が ふくまれているとアエラのその記事は言うのだ。 それは「次期戦闘機の決定」という一項である。 そしてアエラの記事は、功績調書にはそれ以上の具体的な説明はない が、この次期戦闘機の決定とは57年―59年にかけて勃発した グラマン・ロッキード事件以外にはない、として次のように推測する。 グラマン社(丸紅)とロッキード社(伊藤忠)の売り込み合戦において 一旦は防衛庁はグラマン社に決定し、内閣の国防会議(議長は岸信介首相) もそう内定したものが、急に白紙還元となり、最終的にロッキードに変 わった。これがグラマン、ロッキード事件である。 この点に関し、自衛隊史に詳しい元防衛大学校教授の田中宏巳氏は、 叙勲は源田さんが頑張った結果である事を航空自衛隊の基地司令から 聞かされていたという。 源田さんとは、旧海軍航空隊出身の源田実氏のことで、54年に航空 自衛隊が創設されるや航空総隊司令官から59年に航空幕僚長に就任した 人物である。62年に退官して政界に転出し、86年まで自民党の参院 議員を4期つとめた有力な国防族議員だ。 源田氏はまさしくグラマン・ロッキード事件の渦中にいた人物で、 航空隊総司令官の時は国会答弁でグラマン支持を示唆したが、空幕長に 栄転するやロッキード支持に転じたという。 すなわち、アエラの記事は、ルメイ氏への勲一等叙勲は、日本の ロッキード派と組むべく米国の産・軍を動かしてくれたことへの「謝意」 という意味合いがあったとアエラは推測しているのだ。 極めつけは現代史家の秦郁彦氏が語る次の言葉だ。 「対米依存は自衛隊3軍の中でも航空自衛隊が一番強いが、あの時の ルメイへの叙勲で米空軍への日本の従属性が決定的になったと思う」。 この秦氏の言葉を裏付けるように、ルメイ氏への叙勲以降、日本政府 (防衛省)は現在まで、歴代の米空軍参謀総長に同様の叙勲を続けて いるという。 対米従属は外務省だけではない。 米国から利権のおこぼれを預かる政治家・官僚・財界人たちがつくり あげた売国のなせる業であるということである。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)