□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年3月7日発行 第165号 ■ ================================================================== 深まらない抑止力についての議論をあえて深めてみる ================================================================== 鳩山前首相が馬鹿呼ばわりされて辞任した時、メディアがよく 書いた事は、鳩山首相が唯一良いことをしたとすれば、これで抑止力 についての議論が深まることだ、という物であった。 そしてその鳩山前首相は、あれは方便だったという仰天発言最近した。 その時も、やはり鳩山さんは抑止力について納得していなかったのか、 官僚に負けただけだったのか、と抑止力議論が一時再燃した。 それにもかかわらず、それでは抑止力の議論は深まらない。 在沖縄基地といい、全国に存在する在日米軍といい、それは日本を守る ものか、という議論は一向に広まる気配はない。 それは何故か。 安保議論はむつかしいからである。つまらないからである。生活に直接 結びつくものではないからである。 何よりも、はじめに日米同盟ありきであるから、そんな事を議論しても 無意味であることを皆が知っているからだ。 それにも関わらず、やはり在日米軍は抑止力かどうかについて、本当の ところを知る努力はしなければならない。 なぜならば日本は在日米軍のために多大な負担と犠牲を払い続けている からである。 その負担と犠牲に見合うものかどうかについては我々は本当の事を 知らなければならないのだ。 3月7日の毎日新聞「鳥越俊太郎のニュースの匠」というコラムで興味 深いエピソードが紹介されていた。 すなわちソ連邦終末期の1990年、鳥越氏はシベリアにあるICBM (大陸間弾道ミサイル)の基地を取材したことがあるという。 その時案内役のソ連の将校は、長距離ミサイルの標的は米本土であると 明言したという。 それでは中距離ミサイルはどこに向けられているのかと尋ねる鳥越氏に、 その将校は黙って地図の一点を指したという。そしてそれは沖縄だった。 つまり米ソ間のミサイル戦争が始まれば日本は在日米軍の巻き添えを 食らって火の海となるということだ。 抑止力であるはずの在日米軍が、日本にとっての爆弾であるという事だ。 因みに抑止力について、こう明言している者もいる。 米国の手先のような日米安保専門のジャーナリストの一人に日経新聞 の春原剛(すのはらつよし)という記者がいる。 その春原氏が、冷戦後の米国の対日安保政策の担当者であるアーミ テージ氏やナイ氏との対談を収録した本「日米同盟VS中国・北朝鮮」 (文春新書2010年12月初版)が本屋で積まれている。 日米同盟礼賛の御用本だが、随所に興味深い指摘を見つけることが 出来る。 その一つが春原氏の言う抑止力である。 彼は言う。鳩山氏がようやく気づいた抑止力とは、駐留米軍の存在その ものであると。 つまり日本有事の際に米国が真剣に日本防衛に力を注ぐのは、そこに 4万人を超える米兵が生活しているからである、と。 つまり米軍を人質にしているから米国はいざという時に戦うのだ、と。 本末転倒とはこのことだ。 しかし、この指摘は鳥越氏の指摘と見事に一致する。 米軍が日本にいなければ、そもそも日本が標的になることはない。 日本に潜在敵国があるとしたら、彼らの最大の脅威は在日米軍なの である。 そして、それは取りも直さず、日本にとって戦争に巻き込まれる最大の 脅威でもあるのだ。 そのために日本は多大の負担と犠牲を払ってきたということだ。 了

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