□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年3月5日発行 第158号 ■ ================================================================== 一色正春氏に対する私の評価 ================================================================== いつかは書こうと思っていたのだが、私の彼の評価が確定した ので一度だけ書いて置く。 内部告発者の勇気という観点から、私が一色氏のとった行為を 評価するのではないかと思っている読者がいる。 読者だけではない。最高裁の裏ガネを告発した生田弁護士さえ そうだ。 この間のシンポジウムが終わった後で、次は一色さんと天木さん の対談でも企画してみましょうかと言っていた。 確かに 尖閣ビデオ流出事件が起きた直後、私は彼の覚悟について 一定の評価をし、そのことをメルマガでも書いた。 あのままビデオが流出しなければおそらくビデオは公開されずに 終わっていただろう。 国民は何も知らされないまま事件の真相は闇に葬られていただろう。 あのビデオ流出は政府を追い込み、政府の政策を変更させた。 そのおかげで我々は少なくとも国会議員でさえ見ることの出来なかった ビデオを見ることができた。 一公務員がそれだけの事を行なうにはかなりの覚悟がいる。 そして彼は国家公務員の守秘義務違反で罰せられる事を覚悟して それを行なった。 唯一の後悔は迷惑をかける事になる家族の事だと言っていた。 そのような言葉に内部告発者に対する共感と同情を覚える。 しかし、その後の彼の発言により、その内部告発の動機が中国政府 に対する菅・仙谷政権の弱腰を批判する事にあった事を知って、違和感 を持つようになった。 そして発売中の雑誌WILL4月号の記事である。 ウルトラ右翼月刊誌WILLの4月号に一色正春氏の独占手記と田母神 俊雄元空自幕僚長との対談が掲載されていた。 田母神氏を尊敬するといい、親分だったらいいと思う、などと言っている 一色氏を知って、これはダメだ、と思った。私と対極にある人間だ。 しかし、そのような彼にあのような行動をさせ、彼のような人間を右翼に とって英雄視させる原因を作ったのはやはり菅・仙谷民主党政権の対中 外交政策にあったと思う。 あの事件の本質は、なぜ領海侵犯し、不法操業までした中国漁船を政治 釈放したのか、その説明がいつまでたっても政府からなされない事にある。 一色氏が田母神氏の対談と並んでWILL4月号に寄稿している独占 手記の中にも、その批判が専ら繰り返されていた。 ビデオが証明した事は、中国漁船の領海内での明らかな不法操業であり、 その不法操業船に警告を発する巡視船みずきにぶつかってきた事である。 それを国民に知らせ、なぜ法を捻じ曲げて政治釈放したのかを糾弾した かった。 これが一色氏の主張である。 そしてそれは大方の国民の思いであるに違いない。 ところが、これは殆ど国民は知らないに違いないが、その後の報道で 明らかになったことがある。 それは日中間の密約の疑いである。 すなわち領海内の漁業操業は、それを法的措置で対応するのではなく、 見つければ追い払うことで処理する、つまり事実上黙認する、という 話し合いが日中日中漁業交渉の過程で交わされていたという。 おそらくこの密約は国土交通相(当時)の前原氏は知らなかったのでは ないか。だから逮捕を命じた。 そしてその後、中国との間に約束があり、だから中国が約束違反だと ねじ込んで来たことを知って慌てて政治決着に転じた。 これが真相ではないのか。 これが事実であれば菅政権はそれを表に出せないに違いない。 そうであれば今度の事件の真の責任者は外務官僚である。 国民は何も知らされないまま間違った判断をさせられる。 いや政治家さえも間違った官僚に動かされる。 その意味で一色氏もまた犠牲者だ。 官僚のウソを見抜けない菅民主党政権の政治指導力のなさこそ、 尖閣ビデオ事件を起こさせた原因である、ということになる。 結局その結論にたどり着くことになる。 了

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