□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年3月4日発行 第157号 ■ ================================================================== リビア問題は米国問題である ================================================================== リビアの情勢が混迷の度を増している。 そしてリビア情勢が混迷すればするほど米国の中東政策の矛盾が 白日の下に明らかにされることになる。 けだしリビア問題は米国問題なのである。 欧米のメディアはそれを指摘する。しかし、わが国のメディアでは、 リビア情勢の混迷とそれに伴う石油価格の値上がりや経済打撃ばかり を書くが、リビア情勢の混迷の責任が米国にあることについては一切 書かない。 そんな中で情報月刊誌「選択」3月号は「露呈したオバマ大統領の 外交音痴」と題して米国の責任を次のように指摘していた。 その記事はまず冒頭で次のように書く。 「革命を起こしたアラブのマグマがイスラエルに向かうのは時間の 問題だ。この激変に・・・オバマ大統領は手を打てず、革命はやがて イスラエル・アラブ間の暴力と戦争への道を転がると覚悟した方が よさそうだ」、と。 そして、その選択の記事は、以下の通り続ける。 この革命は「反米、反イスラエルがない」と一般的に見なされている がそれは違う。「反イスラエル、反米を控えるという賢い戦略をとった だけだ」(トルコ政府筋)、という。 そして、こんどの革命が、アラブの独裁者達が米国の援助と引き換え に受け入れたキャンプデービッド秩序(1978年)の終わりを告げる ものであることを一番よく知っているのはイスラエルだと、続ける。 キャンプデービッド秩序とは、いうまでもなく「イスラエルは何を しても許される」という暗黙の了解に基づく秩序である。 私が「選択」記事で注目したのは、ムバラク退陣が迫った2月上旬の 段階で中東の安全保障問題を協議する国際会議がイスラエルで開かれて いたという事実である。 その会議はイスラエル、欧州、米国の会議だが、私が注目したのは、 そこに中国が呼ばれていたという事実である。 これは取りも直さず、もし中国がイスラエル寄りの立場に立てば、 パレスチナ人の弾圧はおろか、第五次中東戦争も起こりうるという ことである。 米国は中国が中東問題で親米国、親イスラエル寄りの政策をとる ならば中国にその他の事は大概許すということである。 中国は強大な中東カードを握ったのだ。 問題はオバマ政権が今の中東情勢に、断固とした政策を打ち出せ ないという指摘だ。 それは一言で言えば、民衆デモを支持するという政策と、対テロ 抑止を優先する中東安定化政策という、明らかに対立する二つに ついて、どちらを優先するのか確固たる政策を取れないでいる事だ。 そしてその優柔不断さが、結果として中東の混迷を長引かせ、中東 の犠牲者を増やし続けること、結果として、安定した中東を実現できる どころか中東を反米地域に染め上げる事になる、という指摘である。 ブッシュ前大統領の有名な中東民主化構想は間違っていたが、少なく とも中東を親米、親イスラエル地域にするという国益追及の明確な方針 があった。 今のオバマ政権にはそれが見えないところが危険だというのだ。 リビアの情勢がまさにそれを物語っている。 リビア問題は米国問題であり、米国の中東政策の矛盾の結果である。 了

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