□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年3月2日発行 第148号 ■ ================================================================== いつから独占、寡占が当たり前のようになったのか ================================================================== 大手企業の併合、合併が相次いでいる。一番最近の例は新日鉄と 住友金属工業が発表した合併構想だ。 合併後の粗鋼生産量のシエア(市場占有率)は、世界的には3%程度 だが、国内的には4割だという。製品によっては7割を超えるという。 立派な寡占、独占だ。 寡占、独占は経済学の教科書では健全な競争を妨げると習ってきた。 市場を寡占、独占できる巨大企業にとっては都合がいいかもしれないが、 消費者、被雇用者、中小企業などの弱者にとっては不利な条件を飲まざる を得なくなる。 それは公正ではない。だからこそ公正取引委員会があるのだ。そう聞か されてきたはずだ。 その常識がいつから変わったのだろうか。 いや、変わってはいない。 意見が真っ二つに分かれているのだ。 それを見事に示しているのが3月1日の紙面である。 すなわち毎日新聞「記者の目」では位川一郎という記者が書いている。 グローバル化の中での巨大化競争はあらゆる企業に生き残りゲームへの 参加を強いる。外部の誰かがこの流れにブレーキをかけなければならない。 その役割を担うのは各国の独占禁止当局だ。「合併歓迎」の空気に動じず、 公正取引委員会は冷静な審査をして欲しい、と。 日経でさえも、「大機小機」という経済コラムで、「大きいことはいい ことか」と題して、過度な集中を排除する国際的な規制によりグローバル 化に歯止めをかける選択があってもいい、などと書いている。 ところが読売新聞の社説はその真逆だ。 「国際性重視し機動的な判断を」という見出しの下で、公正取引委員会 は審査に時間をかけることなく他業界にも大規模な再編が期待されるように 早く承認しろ、と書いている。 私がこのメルマガで言いたいのは、どちらが正しいか、ということ ではない。 物事にはつねに両面がある。 物事の当否は時代の流れによっても変転する。 だからこそ、今、どちらが正しいか、を議論し、自らの責任で結論 を出す労を取る必要があるのだ。 そしてそれを国民に説明する必要があるのだ。 その労を取る事無く、なし崩し的に大きな政策変更を行なう菅民主党 政権のいい加減さであり、無責任さを指摘したいのである。 実はこのことは最近の政策決定に関して共通に言えることである。 もはや菅民主党政権は欠点だらけであることがばれてしまったが、その 最大のものは、大きな政策決定に際して、それを明確に国民に知らせる ことなく、あるいは自らの責任ではなく他人の意見をそのまま聞きかじって 、なし崩し的に決めてしまうことである。 新日鉄と住友金属工業の合併の発表を受けて玄葉光一郎国家戦略担当相は 次のように述べたという。 「日本の自動車メーカーにしても家電メーカーにしても多すぎる」、と。 政権政党の政調会長であり、内閣の主要閣僚である政治家が、いとも簡単 にこう言い放つ。 そこに菅民主党政権の軽さがある。政治の劣化がある。 了

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