□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年3月1日発行 第146号 ■ ================================================================== 菅政権の下で猛烈に進む弱い者イジメ その1 上関原発スラップ訴訟の卑劣さ ================================================================== 菅民主党政権になって、政権交代前に国民が期待していた政策が どんどんと後退、放棄されている。 その事が菅民主党政権に対する国民の失望と怒りを招いている。 私もそんな失望と怒りを覚える国民の一人である。 しかし菅民主党政権の責任は、そのような大きな政策の変更や マニフェストの放棄だけではない。 そのような変更や裏切りは政局の一大争点として国会で散々追及され、 メディアもまたそれを書きたてるから国民もそのことに気づいている。 しかし、菅民主党政権の本当の罪は、そのような目に見える自民党 政権への先祖返りにとどまらない。 もっと深刻で許せないのは、自民党政権下でもここまでは許されなか ったと思われる弱い者イジメが、官僚主導で静かに強行されている事 である。 この事について何回かにわけて書いてみる。 そのはじめは山口県の上関原発建設問題に関する訴訟(スラップ) である。 国が関係する訴訟と言えば、国民や住民が国の不当、不法、違憲政策 を阻止するために訴えるものと相場が決まっている。 しかし、強者である国家権力や大企業が、弱者である国民、住民を 提訴する訴訟が増え始めてきた。 いわゆるSLAPP(スラップ)と呼ばれるもので、Strategic Lawsuit Against Public Participation の頭文字をとった言葉である。 訴訟といってもその実態は、権力を持たない住民や消費者ら弱者に対 して、国家権力や大企業が、恫喝、発言封じ、いやがらせなどの目的で 起こす訴訟だ。 中国電力が山口県熊毛郡上関町に原子力発電所を建設しようとし、抵抗 する住民との間で長年対立が続いてきた。 反対理由は、原発建設の危険性や環境保全とか、そのほか様々な理由が あるが、その当否はここでは問わない。 中国電力はその工事を強行する為、反対住民を相手取って、工事妨害を したとして訴訟を起こし、巨額の損害賠償を求め、それを使って妨害を やめさせようとする行動に出たのだ。 そしてその訴訟に関連し、山口地裁はついに2011年2月21日に、 工事妨害者に一人500万円という法外な罰金を課す仮処分を決定した。 これを強者による弱者イジメと呼ばずしてなんというのだろうか。 欧米ではおよそこのような権力側の訴訟権の濫用は厳しく抑止されて いると聞く。 訴える中国電力も、この訴訟を裁く裁判官も、いずれも国家権力の内側 にある大企業であり官僚だ。 菅民主党政権が脱官僚を放棄した時から、官僚たちは自民党以上に 菅政権は与し易いと見抜いた。 政権崩壊にまで追い詰められた菅民主党政権の政治家たちは、もはや 官僚のやっている事を監視する余裕はない。 その結果、官僚の国民イジメが野放図になっている。 菅民主党政権が意図的にこのような行為を認めているとは思えない。 しかし菅民主党政権が強固な政権であり、それゆえに権力者は弱者に 配慮するという政治の王道をわきまえることの出来る政権であるならば、 こんな動きは決して出てこなかったであろう。 みずから招いた政局に翻弄される余り、権力をつかって弱者をいじめる 官僚を放置せざるを得ないのだ。 スラップ訴訟は上関原発訴訟だけではない。 弱者いじめはスラップ訴訟だけに限らない。 しかし、このような弱い者いじめの数々は決して大手メディアで大きく 取り上げられる事はない。 大手メディアもまた権力側にいるからだ。 この深刻な問題については次回以降も続けて書いていきたい。 了

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