□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年2月28日発行 第143号 ■ ================================================================== 大森実記者の病院爆撃報道をめぐる心に残るエピソード ================================================================== 2月28日の毎日新聞に報道と日米関係をめぐる歴史的エピソード を見つけたので紹介したい。 その要旨は次の如くである。 ベトナム戦争開戦当初の1965年秋、当時の北ベトナムのハノイに 西側記者ではじめて毎日新聞外信部長の大森実記者が入った。 その大森記者は「米軍がハンセン病院を爆撃した」と報道。これが 当時の駐日米大使であるライシャワー氏の逆鱗に触れた。 ライシャワー大使は記事が出た2日後に記者会見し、「これはまったく 事実に反している」と大森記者を名指しで批判した。 毎日新聞は当初は大森報道を「正確だ」と主張しては見たが、その後 の毎日新聞の姿勢は変化し、大森氏はそれを「自分の報道の事実上の 修整」と受け止め、会社に抗議する形で翌年(66年)1月に退職した。 ライシャワー大使の特別補佐官であったジョージ・パッカード氏は当時 を振り返って2月28日の毎日新聞の記事の中で要旨こう語っている。 ・・・ライシャワー大使は米軍が病院を爆撃することなど考えられな かったのだが、ハノイ情勢を把握して批判したわけではなかった。すべて の情報が大使には入っていなかった。 なぜ米軍が病院を攻撃したかは今も不明だが誤爆の可能性はある。 当時米軍は北ベトナムについて十分な情報を持たなかった。 いずれにしろ大森氏の報道は正しかったのだ。 その後ライシャワー大使は、大森氏を非難したことについて「私の 外交官人生で最悪の間違いだった」と語り、生涯、謝罪したいと考えて いた・・・ もはや二人ともこの世を去っているが、米国の戦争報道と日米関係の あり方を考えさせられる歴史的エピソードである。 それを教えてくれたこの毎日新聞の記事は貴重である。 いまの日本で大森氏のような記者が見当たらない事が残念だ。 了

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