□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年2月24日発行 第135号 ■ ================================================================== 絵に描いたような「省益あって国益なし」である ================================================================== 政権が弱体化すると官僚が跋扈する。 省益が国益に優先され、それを弱体政権が抑えきれない。 それが今の菅民主党政権の姿である。 それを見事に証明する記事を今日(2月24日)の新聞に二つ見つけた。 一つはニュージーランド被災救援のために飛ばす特別機をめぐる外務省 と防衛省の争いである。 例によって前原外相が大見得を切った。国際緊急援助隊の派遣には政府 専用機を使う。そこに行方不明者の家族も同乗できるように手配している、 と。 これに対して政府専用機を管理・運用する防衛省の北沢大臣が、防衛官僚 に言われるままに「待った」をかけた。 そんな話は聞いていない、と。 結局同乗できない事になったのだが、この混乱はひとえに外務官僚と防衛 官僚の長年にわたる日米同盟をめぐる主導権争いの氷山の一角である。 そしてそんな官僚たちの縄張り争いを前にして、菅首相の指導力は皆無だ。 もう一つはTPPをめぐる経済産業省と農水省の権限争いである。 TPPを推進しようとする経済産業省は独自の農業支援策をまとめこれを 2月22日の読売新聞に大きく書かせて宣伝した。 23日の東京新聞などがその後追い記事を書いた。 しかし農業支援は農水省の専権事項だ。農水省が黙っていない。 2月24日の各紙が一斉に報じた。 篠原孝農水副大臣が23日の記者会見で「各省ごとではなく、政府本体で まとめて議論すべきだ」と経済産業省の独断専行を批判したのだ。 これは正論だ。 しかし、コメの国際化問題は、貿易を担当する経産省と農業を主管と する農水省の間の長年の権限争いだ。 GATTやAPECといった国際交渉の場ではことごとく対立し、歴代のどの政権も これを調整することは出来なかった。 こんどはTPPだ。 ただでさえ国論を二分するTPP問題に、経産省と農水省の権限争いが絡む。 弱体の極みにある菅民主党政権がそれを抑える事は不可能だ。現に菅首相は 何も指導力を発揮できないでいる。 これでどうして平成の開国が実現できるというのか。 それにしても、と思う。ニュージーランド被災といい、TPPといい、国家の 一大事である。 そんな大きな問題でさえも官僚たちは権限争いをやめない。 まさしく「省益あって国益なし」である。。 それを克服するために政権交代を果たすと民主党は叫んだのではなかった のか。国民はその民主党に期待して政権交代をさせたのではないのか。 民主党政権になって官僚の跋扈もまた自民党時代よりも酷くなった。 これでは国民生活は良くなるはずはない。 了

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