□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年2月22日発行 第128号 ■ ================================================================== 映画「太平洋の奇跡」をどう評価するか ================================================================== 映画「太平洋の奇跡―フォックスと呼ばれた男」を観た。 重い映画だ。しかし日本人、特に戦争を知らない若い世代に観て もらいたい映画だ。 あの映画を観た日本人はこの映画をどう評価するのだろうか。 である。 2月20日の読売新聞に、この映画の主人公である大場大尉役の 竹野内豊という若い俳優のインタビュー記事があった。 その中で彼は「誇り高い兵の魂を感じた」と語っていた。 同時にまた彼は「現代の我々ではとうてい理解できないと思います」 とも語っていた。 この二つにこの映画のすべてが凝縮されている。 この映画の原作となった著書の作者は元アメリカ兵である。 2月22日の産経新聞が報じるその著書の邦訳「タッポーチョ ー太平洋の奇跡」(祥伝社)の宣伝文句は、「敵ながら天晴れ」、 玉砕の島サイパンで本当にあった感動の物語、となっている。 壮絶を極めたサイパンのタッポーチョ山で512日にわたって戦った 日本兵と民間人。その指揮をとったのが大場栄大尉、すなわち米軍を 苦しめた「フォックスと呼ばれる男」なのである。 あらゆる興行映画はエンタテーメントの要素が必要である。 この映画の売りはまさしく勇敢に戦い、降伏の時でさえ毅然とした 態度を失わなかった日本兵の誇りである。それを指揮した大場大尉の 指導力である。 だから映画の宣伝のためにはそこが強調される。 竹野内の言葉もそれを言わされている。 メディアに流される映画評もそこを書く。 しかしこの映画のもう一つテーマはまぎれもない戦争の悲惨さだ。 最後にこういう場面がある。 日本軍の抵抗に手をやいた米軍の隊長が、降伏を決断した大場大尉に 「あなたは多くの日本人の命を救った」とたたえる。 それに対し大場大尉は、「私は、救った命以上の命を失わせた。ほめ られることは何一つしていない」、と答える。 私がこの映画を観て感じた事はただ二つだ。 愚かな為政者を持った国民ほど不幸なものはない、大場大尉もまた そのような愚かな為政者たちの犠牲者の一人なのだ。 そして戦争は如何なる意味でも繰り返してはならないという強い決意を 再確認したこと。 これである。 竹野内豊に代表される日本の若い世代の一人でも多くがこの事に気づく 時、日本の将来に一条の光明を見出す事ができる。 了

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