□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年2月21日発行 第124号 ■ ================================================================== 中東は燃えている ================================================================== 「こんな事態になるとは誰が予想できただろう」 こういう言葉が中東情勢を伝える日本のメディアの常套句と なっている。 しかしレバノンでは米国のイラク攻撃が始まった2003年の時点で、 すでに皆が言っていた。 「米国がサダムのフセインを倒すのは一日で出来る。しかし米国には イラクを安定化させることは出来ない。最悪のシナリオは中東全域に 混乱が拡がることだ」、と。 そしてそのレバノン人の論評の意味するところは深い。 なぜ民衆革命が起きたのか。そしてその嵐が連鎖反応を見せたのか。 それは、弾圧され、貧困に追いやられていたアラブ市民が独裁者に 対して立ち上がったからだ。 不可能と思われた独裁者の圧政でも市民が勇気をもって一斉に立ち 上がれば倒せる。その事をチュニジアとエジプトの市民が知らせて くれたからだ。 しかし、今度の市民革命の連鎖がもたらす意味はそれだけではない。 市民革命の背後に流れるアラブ市民の鬱屈は単純ではない。 部族的、宗教的対立がある。 米国、イスラエルの中東支配に対する反発がある。 中東地域の持つ資源や戦略的重要性に対する主要国の争奪があり、 介入があり、それと結びついて利権を狙うアラブ人同士の争いがある。 これらの複雑な利害関係に蓋をしてきたのが、中東の独裁制であり、 それを支持してきた米国の中東政策であった。 レバノン人が言いたかったのは米国のイラク戦争はそのような弾圧に よる均衡を破る事になる、パンドラの箱を開ける事になる、そして一端 パンドラの箱が開けば、もはや誰にも留める事はできない、世界最強の 米国の軍事力をもってしても抑えることはできない、 そういう意味であったのだ。 いまそれが我々の目の前に繰り広げられているということだ。 そうだとすればこの混乱は長く続く。 少しでも有利な地位を中東に築こうとする欧米諸国の介入が激しくなる のもかつて来た道だ。 この混乱は中東の民主化一直線とはならない。 それでも私は信じている。 これは中東の民主化の始まりだ。 アラブ人がみずからの手でみずからの将来を決める、そういう意味での 中東の民主化の始まりである。 そしてそれはイスラエルとパレスチナの間の公正で永続的な平和に必ず 結びついていく事になる。 たとえイラン国民が反米一辺倒のアフマディネジャド政権を倒して民主 革命を果たしたとしても、民主的な政権が出来さえすれば、いや民主政権が 出来るからこそ、その事が否が応でも中東和平に結びつく。 なぜならば民衆の意思は和平を好むからだ。不公正を許さないからだ。 今中東は、そのような民主化に向かって目覚めたのである。 中東が混乱すれば日本経済が打撃を受ける。早期安定を好む。 日本のメディアはすぐそのような反応を示す。 そんな一時的な利害関係をはるかに超えた、歴史的転換期がいま中東を 襲っている。中東は燃えている。 了

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