□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年2月19日発行 第121号 ■ ================================================================== すべては保身、出世のために ================================================================== 18日に公開された外交文書が思わぬところで反響を呼んでいる。 2月19日の朝日新聞がとりあげた次の記事で説明するとこうだ。 ・・・1990年代に外務省から国立国会図書館に出向していた職員 が、国会議員から頼まれた調べ物のテーマをひそかに一覧表にまとめ、 外務省に伝えていた。これは不偏不党と秘密厳守が厳しく求められて いる国会図書館の職員にとっては「あってはならないこと」(国会 図書館総務課)である・・・ 今回明らかになった文書は98年1月7日付の「国会議員等からの レファレンス状況報告について」(秘無期限)という文書だという。 「議員の関心事項を知る上で有益と考えられますので参考までに供覧 します」、「取り扱いについては、十分御注意願います」、などと表書き され、外務省官房総務課から省内の関係部署に回覧された記録が残って いるという。 国会図書館側は組織的関与の有無などの調査を外務省に求めたという。 この記事を読んで私は悲しくなった。その理由は次の通りだ。 外務省から国立国会図書館に専門調査員として出向させられる職員は 出世コースから外れたキャリア官僚だ。 外れたといってもその後に大使職が約束されている。 少しでも大きな国の大使に任命されたいと願って一生懸命仕事をする。 あわよくば本省の幹部職に返り咲くかもしれないという淡い期待もある。 そもそも国立国会図書館に出向してもほとんど仕事はない。次のポスト が決まるまでの待機ポストであるからだ。 そんな中で、今回明らかになった国会議員の調査活動をスパイもどきに 調べる事は、まさしくその出向職員に期待された重要な仕事なのである。 外務省が組織的に関与した調査である事は間違いない。 1998年といえば私がデトロイトの総領事をしていた時だ。当時誰が 国立国会図書館に出向していたかは容易に想像できる。 同僚たちである。 まともな仕事が無い中で、一生懸命国会議員の調査活動を調べて外務省 に報告する。 すべては保身と出世の為だ。 その姿を思い浮かべると彼に同情し、悲しくなる。 それにしても外務省の恥部をさらすようなこんな機密文書まで公開するとは 外務省はすっかり壊れてしまった。 外交文書の公開に際しては、その文書の一つ一つを精査して判断する能力 さえ失ってしまっているのだ。 これから公開される外交文書の中には、歴史を変えるような文書が不注意 で出てくるかもしれない。 メディアや研究者にとっては宝の山になるかもしれない。 了

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