□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年2月16日発行 第110号 ■ ============================================================= 鳩山発言叩きの裏で進行する官僚主導の対米従属外交 ============================================================== 新聞休刊日に行なわれた鳩山首相のインタビューは、予想どおり一夜 明けた15日の各紙で大きく取り上げられた。 そしてその衝撃は日増しに大きくなっている。 与野党こぞって怒り、国会での参考人招致までを求めて追及する雲行 きだ(16日日経新聞ほか)。 16日の朝日(「方便」とは驚きあきれる)や毎日(無責任極まる 鳩山発言)などはその社説で口を極めて非難している。 確かにあの鳩山発言はひどい。ひどいけれどそれが鳩山さんだ。 何でもばらしてくれる。 あのインタビュー記事で私が注目したのは、「方便」発言のひどさも さることながら、官僚とメディアに潰された鳩山外交の実態が明かされた 事である。 一部の官僚とそれに通じた一部のメディアがこの国の対米外交を米国の 手先のようになって動かしているという事実だ。 この事をメディアは一切書かない。 今後どのように立派な首相があらわれようとも、彼らに抗して国民の ための外交を行なう事は至難のように思える。 日米同盟の深化に向けた日米両国の外務・防衛担当局長会議がワシントン で始まったのは2月10日である。 日本側からの出席者は梅本和義外務相北米局長と高見沢将林防衛省防衛 政策局長であり、米国側はキャンベル国務次官補、グレグソン国防次官補 である。 対米従属で出世していく日本の官僚と、日本への命令を任されている 米国の日本担当官だ。 この官僚間の協議こそ、その後に続く外務・防衛閣僚協議(2プラス2)、 菅総理の訪米を振付けるシナリオ作りだ。 そのような重要な協議が政治不在のなかですべて官僚に委ねられている。 その協議はとっくに終わっているはずなのにそこで何が話し合われたか、 米国が日本側に何を要求(命令)して、それに対し日本側がどう答えた (譲歩)か一切知らされない。報じられない。 国民に知らされないどころか、菅首相や前原外相に対してさえもすべて は知らされないのだ。 2月12日の読売新聞にダニエル・イノウエ上院歳出委員長が記者会見 で次のように語ったと小さく報じられていた。 「(普天間問題は)この夏に行なわれる日米首脳会談において解決 されるであろう。我々は辛抱強いが、米国があとどれだけの間、何も しないまま見守っていられるかわからない」、と。 いつのまにか日米首脳会談は「夏」になってしまった。 「春」という表現ではじまった菅首相の訪米は、「遅い春」なり、 「連休中」になり、そして「6月末」となり、今度は「夏」である。 しかもイノウエ議員の意識は菅総理訪米ではなく日米首脳会談だ。 この迷走の真の背景こそ国民に隠されているわが国の対米外交の 本質である。 メディアが決して書かないことである。 鳩山首相の「方便」発言を騒ぐのもいい。 しかし今メディアが行なうべき事は、一体普天間問題でどのような 話し合いが行なわれているのか、それを国民に教える事である。 すべてが決まった段階でそれを首相に押し付ける。国民に飲ませる。 もはやそのような外交が昨日しない事を官僚もメディアも気づくべき である。 了

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