□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年2月15日発行 第107号 ■ ============================================================= アスベスト問題を正面からとりあげた毎日新聞「記者の目」 ============================================================== アスベスト問題の追及は私にはなじまない。 それを深く追及してはいけないという助言も受けた。 だからもう書くつもりはなかったが、ついに毎日新聞に、この問題を 正面から取り上げた記事を見つけたのでもう一度だけ書く。 私がアスベスト問題に関心を持ったのは耐震偽装事件を告発した藤田 東吾元イーホームズ社長が私にこう言った時からだった。 藤田氏が耐震偽装問題で国土交通省の官僚と話をしていた時、建設官僚 たちは、もっと厄介な問題がある、それはアスベスト除去問題だ、と話し ていた、と。 耐震問題が起きたのでそれどころではなくなった、と。 私は直感的にアスベスト問題の深刻性を感じ取った。 そこには官僚の不作為の罪のすべてが凝縮されていると思った。 出世に役立たない事はしない。嫌な仕事は他の省庁に押しつけあう。責任 を民間に転嫁する、これである。 真のアスベスト問題は、アスベストの粉末を吸引して発病し亡くなった人 たちの補償問題ではない。 これから起きるあらたなアスベスト被害をどう防ぐかだ。 危険を承知でアスベストを使い続けた日本の建設行政。 そのアスベストが使用された大量の建築物が、いま老朽化のため解体、 改築せざるを得ない時期を一斉に迎えている。 アスベストは建物の内部にとどまっている限りは問題ない。それが粉に なって飛沫する時、それを吸い込む事が危険なのだ。 本来は政府がその危険性を国民に告知し、解体工事に際する十分な対応策 を法律で定めるべきであるのにそれを怠っている。 どの省庁もやりたがらない。責任官庁が曖昧なままだ。 それはとりもなおさず責任を不明にすることだ。 そんな状況の中で民間建築会社や解体会社に、その危険性除去方法を まかせている。 ただでさえ経済状況が厳しい中だ。業者は経費節約のためアスベスト除去の 際の安全性を軽視する。 アスベスト被害は、アスベスト粉末の吸引から何十年以上も経たないと発症 しない、という気安さが、ずさんな処理を助長する。 その結果、驚くほど危険な状況が放置されているのだ。しかし国民にその 認識はない。 このアスベスト問題を繰り返し取り上げ、警鐘をならしてきたのは東京新聞 だけだった。 しかし、いくら東京新聞がとりあげても、他紙は黙ったままだった。 エイズ薬禍の被害者である川田龍平氏が国会で取り上げたが無視された。 あたかもアスベスト問題を表面化させない強い力が働いているかのようだ。 それを正面から取り上げる事はタブーだと言わんばかりだ。 そんな中で2月11日の毎日新聞「記者の目」で大阪編集局の大島秀利氏が この問題を正面からとりあげた。 そこには主要問題点のすべてが書かれている。 日本政府が早急に取り組まなければならない政策が書かれている。 ここまで書かれて政府が何も行動を起こさなければおかしい。 メディアが書きはじめなければ不自然だ。 毎日新聞のその記事によればこの、問題に熱心取り組んでいるのは 子供の将来を憂える母親たちだという。 母親の愛が、果たしてアスベスト問題を国民の広く知る一大社会問題に 発展させていくのだろうか。 了

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