□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年2月7日発行 第83号 ■ ============================================================= 八百長報道から見えるもの、それはこの国の欺瞞 ============================================================== 私は直近のメルマガで八百長報道の騒ぎを批判した。もっと他に書く べき重要なことがあるだろうと。 引き続き八百長報道は続いている。 しかし、それらを読んでいるうちに、一つの重要な事に気づいた。 八百長問題の本質は、実はこの国の政治の問題と同じではないのか。 八百長報道はこの国の政治とそれを許すこの国の姿を見事にあぶりだし ているのではないか、と。 それは一言で言うと隠し続け、逃げ続ける権力者のウソと欺瞞 であり、往生際の悪さである。 それをゆるす権力者どうしのもたれあいである。 今の菅民主党政権とそれを攻め倦む野党の八百長試合の如き体たらく である。 それに嫌気がさした結果が名古屋のトリプル選挙で示された民意では ないのか。 2月7日の産経新聞が、別府育郎編集委員の記名入りコラム「先人の遺言 に耳を傾ける時」の中で、次のようなエピソードを紹介していた。 すなわち元関脇の玉の海梅吉が、かつてその著書「これが、大相撲だ。 生きて、みつめて」(潮文社)のなかで「恥ずかしい話だが、私自身も 悔恨の残る土俵があった」と八百長を告白していたこと、 その告白によって相撲協会の最高幹部などから有形無形の圧力を受けた こと、 しかしその圧力にもめげず、「この問題に踏み込むと、いろいろと傷つく 人もいる。話が過去に及べば、厳重に取り締まるべき立場の人間まで言及 される可能性だってないとは言えない。しかし勇気をもたなくてはいけない」 とインタビューで答えていたこと、などである。 30年ほど前の事だと言う。 そしてその産経の記事は次のような言葉で締めくくっている。 「当時黙殺された玉の海さんの言葉を遺言と思い、いまこそ角界の方々の、 胸に刻みつけてもらいたい」 おりから今日発売の週刊現代2月19日号は「八百長力士はまだいくら でもいる」と題して警視庁組織犯罪第3課が作成した資料を示し、警察も新聞 記者もテレビ局も、そして八百長はなかったと週刊誌に賠償命令判決を下した 裁判官も、みんな知っていた、と書いている。 これらの記事が示すことは、いま、我々の目の前で繰り広げられている 八百長問題の調査や処罰や春場所中止などが、それ自体八百長であり、責任 逃れであるということだ。 そしてそれを報じる大手新聞、テレビ局も、キャスターや評論家のコメント もすべて八百長だということだ。 この大相撲八百長劇は、取りも直さず、この国の政治家や官僚の組織犯罪が トカゲの尻尾きりで終わる欺瞞と見事に符号するのではないか。 大手メディアの記者クラブが、知っていながら決して書かないところまで 同じではないか。 抜本的出直しといい、膿を出し切るといい、中途半端に終わらせるな、 という。 産経新聞の別府編集委員も言う。玉の海の遺言を刻み込め、と。 しかしそれはどういう事なのか。 何が真の解決なのか。そこまで問わなければならない。 角界も政界も官界も、そして大手メディアも、最高責任者が全員その 誤りを認め、その職を退き、あらたなメンバーで再出発する。 権力者の総入れ替えだ。 そこまで行かないと本当の出直しとはならない。 また同じ事が繰り返される。 日本の閉塞感は終わらない。 それはあたかもエジプトの反政府運動が、ムバラク大統領の即時辞任と追放 にまで行き着かないと混迷が長期化するのと同じ事だ。 真の改革、革命はそれほど難しいということだ。 国民もまたそれを望むなら覚悟がいるのだ。 大相撲八百長報道騒ぎに意味があるとすれば、その事を教えてくれたこと である。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)