□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年2月3日発行 第72号 ■ ============================================================= 北方領土問題についても試される事になった日米韓同盟 ============================================================== 2月2日の各紙は、ロシアのバサルギン地域発展大臣が1日、北方領土 への開発プロジェクトに韓国企業の参加を求めたと一斉に報じた。 昨年11月、ロシアのメドベージェフ大統領の国後島訪問の時、あれ ほど大騒ぎをし、それを見通せなかった駐露大使を更迭した菅民主党政権 は、その後ロシア側がこれ見よがしにエスカレートする北方領土占有の 既成事実化に、何一つ手が打てなかった。 その果ての今回のロシア側の動きである。 情報不足が理由で外交をしくじったのではない。 誰もが目にする公開情報を前に、何一つ効果的な外交が出来ないでいる。 外務官僚の無能さは言うに及ばず、政治主導の外交さえも何も行われて いないのだ。 しかしその事の追及がこのメルマガの趣旨ではない。 米国にそそのかされて突如として言い出した「日米韓同盟」なるものが、 またしても脆いものであることがやがて明らかになると言いたいのだ。 日米韓同盟なるものが、もはや中国の脅威に対抗するためのものになり 得ないことは明らかだ。 米国は中国との経済関係を損なってまで敵対する気はなく、韓国は中国を 刺激することは避けたいと考えている。 そして今度は北方領土問題である。 そもそも北方領土問題は、スターリンに弱腰なルーズベルトが、日本との 講和条約の際に、その帰属をわざと曖昧な形にし、日本とソ連(現ロシア) を末永く離反させようとした策略があったと言われている。 今でも米国は北方領土問題について同盟国である日本を支援しようとは しない。 そして今度は同盟国としての韓国の出方が注目されることになる。 もし韓国企業がその呼びかけに応じる事になれば、それは韓国がロシアの 北方領土占有を認める事だ。 果たして日本政府は韓国政府に日韓同盟のよしみで、このロシアの誘いに 応じるなと申し入れるのだろうか。 その場合、李明博大統領は韓国企業や韓国民の前で、菅首相にどのような 返答をするのだろうか。 メディアは、ロシアが投げかけたこの巧妙なクセ球を、前原外相や菅首相が どのように打ち返すのか、徹底的に取材して国民の前に情報公開すべきだ。 日米韓同盟は北方領土問題についてもその真贋が問われる事になった。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)