□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年1月26日発行 第53号 ■ ============================================================= イスラエルの正体をあぶりだした08年和平交渉の内部文書 ============================================================== 1月25日と26日の朝日新聞が08年の中東和平交渉の内部文書に 関する記事を立て続けにスクープ報道している。 すなわち25日の記事では、パレスチナ側が東エルサレムのユダヤ人 入植地の大部分をイスラエルが併合してもいいという譲歩案をイスラエル 側に提示していたというのだ。 そして26日の記事では、パレスチナ難民が故郷に戻る権利までも放棄 する発言をアッバス・パレスチナ自治政府議長が発言していたという。 中東の衛星テレビ局アルジャジーラが入手した内部文書によるという。 これによりアッバス議長は批判にさらされるだろう。 パレスチナの内部対立がさらに激しくなるだろう。 パレスチナ政府は強硬姿勢をとらざるを得なくなり、中東和平はさらに 遠のくであろう。 しかしこの内部文書が明らかにしたことは、そのようなパレスチナの内部 矛盾だけではない。 この内部文書が明らかにした本当に重要なことは、たとえパレスチナが どのような譲歩を見せようともイスラエル政府は決して和平に応じない、という イスラエルの正体なのである。 東エルサレムへのイスラエル入植を認めることや、パレスチナ難民の故郷 帰還権を放棄することは、いずれもパレスチナにとってはこれ以上ない譲歩 である。譲れないとされてきた権利の放棄である。 パレスチナ問題を少しでも知っている者であればそれがわかる。 それにも関わらず中東和平交渉は進展しなかったのである。 これは取りも直さずイスラエル側が一切の譲歩をしない、ということだ。 和平そのものを望んでいないということだ。 どのような譲歩をパレスチナ側が行なおうと、パレスチナ国家の存在を あきらめるまで弾圧を続けるということなのである。 このイスラエルの本性を一番良く知っているのがパレスチナの人々である。 「我々がどんなに譲歩してもイスラエルがパレスチナ国家の樹立を受け 入れることはない。パレスチナ指導部にできることは何もない」(1月 26日朝日)。 パレスチナ人がこのニュースを知って語った言葉だ。 テロを止めない限り話し合いに応じるわけにはいかない、というのが イスラエルの繰り返す口実だ。 それがウソである事を内部文書は教えてくれた。 テロをすべて抹殺し、その上でパレスチナ国家を抹殺する。 これがイスラエルの正体である。 テロがなくなるはずはない。 そんなイスラエルを支持する米国がテロとの戦いに勝てるはずはない。 そんなテロとの戦いに加担するのが日米同盟なのである。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)