□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年1月26日発行 第52号 ■ ============================================================= 自衛隊情報保全隊という組織の存在とその監視活動は要注意である ============================================================== 1月24日の産経新聞が自衛隊情報保全隊という組織が防衛省OBの 言論活動を密かに監視していた、という事実をスクープした。 すなわち防衛省は平成21年8月に陸海空3自衛隊の情報保全隊を統合し、 大臣直轄部隊として新編、強化した。 その自衛隊情報保全隊が、国防に関する本来の情報収集活動から逸脱し、 政府の方針に反する防衛省OBの言論活動を監視している、これは不当 調査だ、秘密国家化だ、というスクープである。 監視対象になった者として具体的に名前が挙げられているのは田母神 元航空幕僚長とヒゲの佐藤こと佐藤正久参院議員であるが、その他のOB たちも対象にされているという。 いずれも、産経新聞が唱える自主国防政策を主張する人物である。 だからこそ、産経新聞はこの問題をその後も熱心に追及しているのだ。 自民党の国防部会も25日、調査に乗り出した(1月26日東京、日経)。 政権奪還を目指す自民党が民主党の政策の不備を突いて攻撃するのは当然だ。 その一方で、この問題については、その他の政党や大手メディアは まったく無視しているかのようだ。 なぜだろう。 もし共産党や社民党が、これは右翼の取り締まりだから自分達には関係が 無い、と考えて大目に見ているとすれば大きな間違いだ。 実際のところ情報保全隊はかつて共産党が自衛隊を侵食する事を防ぐという 名目で、共産党を監視していたという(1月24日産経)。 いつなんどき、護憲活動や人権活動が自衛隊情報保全隊の監視対称になるか わかったものではない。 もし護憲政党がこの問題で沈黙を守るのなら、それはあたかも不当逮捕、 拷問などで国家権力の犠牲になってきた共産党が、小沢問題では小沢叩きに 走る。その構図とよく似ている。 もう一つは、自主防衛をやたらに唱える田母神氏や佐藤氏の右傾化した 政治的立場は、決して米国がこれを認めないということだ。 菅民主党政権は米国の機嫌を損なうような政策は一切とらない政権だ。 その菅民主党政権が、田母神、佐藤両氏ら自衛隊OBを監視するという ことは、米国を刺激してはいけない、という事だ。 米国の方針に反する者たちの言動は認めないということだ。 産経新聞の国防政策を支持する右派愛国主義者たちは、よく自覚した ほうがいい。自分たちは決して米国に受け入れられない反米主義者である と米国には映っているという事を。 そんな菅民主党政権はまた、いつなんどき、米国のテロとの戦いを 批判する護憲・平和の一般市民を監視し出すかわからないということだ。 この観点からも、共産党、社民党は自衛隊情報保全隊の活動をこのまま 見逃してはいけないのである。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)