□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年12月23日発行 第272号 ■ =============================================================== 河野駐ロシア大使の更迭を私はこう見る =============================================================== 12月23日の朝日新聞が一面で河野駐ロシア大使の更迭をスクープした。 同じ日の読売新聞も小さく報じていたが、やはりこれは朝日のスクープだ。 着任して2年未満でロシア大使が交代するということは病気や不祥事でも ない限り異例な人事だ。 朝日報じるように、北方領土問題の際の情報収集能力の不足が原因の更迭 と見るべきだろう。 しかし、もしそれが理由で更迭されたとすれば、私は民主党政権の政治主導 が間違って使われたと思う。 一つは河野大使を更迭したぐらいで外務省の対ロシア外交が強化されると いう事は絶対にないからだ。 私は河野大使を弁護するつもりはない。しかし今度の情報入手能力のなさは、 彼一人の責任では決してない。大使館全体の劣化の問題だ。 そしてそれを放置してきた外務省本省の責任である。 しかもそれは今に始まった事ではない。長年、常態化してきた問題なので ある。 行なうべきは外務省の組織改革と人事の抜本的刷新である。 それを行なわずに河野大使の更迭だけで済まそうとしたのであれば、国民 受け狙いのパフォーマンスであり、誤った政治主導である。 その結果何が残るか。 河野大使個人の面目を潰すだけで、後にしこりを残す。 確かに外務大臣は外務官僚の人事を握っている。それを正しく使えば政治 主導の外交ができる。 しかし今回のような更迭は官僚たちを使いこなすという観点からはまずい やり方である。 河野大使は外務省の主流を歩んできた一人だ。省内で嫌われているわけでは ない。本来ならば外務省は組織をあげて河野大使を守るべきなのに、次官や 幹部が覚悟を決めてその更迭に反対した気配はない。 下手に逆らって自らもまた不利な人事をこうむる事を恐れるのである。 そんな不甲斐ない外務官僚だからこそ、面従腹背がさらに進む事になる。 外務官僚と民主党政権との関係はさらに離れることになる。 私は今の外務省にも、今の民主党政権にも、もはや何の期待も持っていない。 だから今度の河野駐ロシア大使の更迭は私にとってはどうでもいい事である。 しかし困難な外交案件が山積している中にあって、日本国民のためを思えば、 今度の河野駐ロシア大使の更迭はまたしても前原外相の勇み足であると思う。 ひょっとしてその政治パフォーマンスの代償として、河野大使をこの後さらに 厚遇する事を考えているのかもしれない。そうであればそれこそ茶番である。 河野大使のその後のポストについても目を離せない。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)