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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

河野駐露大使の一時帰国は一体何だったのか
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年11月8日発行第186号 ■       ===============================================================          河野駐露大使の一時帰国は一体何だったのか     ===============================================================  あっけにとられたので続編を書いておく。  それは今日の各紙が一斉に取り上げている河野駐露大使の突然のロシア 帰任である。  思い出していただきたい。河野大使の一時帰国を発表した時、前原外相は 記者会見でこれをあたかも日本の毅然とした対露抗議であるかのように得意顔 で話していた。  それを各紙が一斉に大きく報じた。  表向きは現地大使からの報告を聞くと言っていたが、間違いなく大使の召還 のごとき効果も狙っていた。  大使召還という強硬な措置をとってロシアを硬化させては逆効果であるが、 一応抗議のメッセージは送っておく、という事だった。  及び腰ではあっても、前原外相にとっては自らのイニシアティブを発揮した 政治主導の対露外交であったことは間違いない。  1月5日の報道でも、外務省幹部の「(河野大使の)帰任はAPEC後となる」 という話を紹介する記事もあった。  当然だろう。少しでも抗議の意味があればすぐに帰任させては意味が無くなる。  おまけにもうすぐAPECが東京で始まる。首脳会談が行なわれれば、その 首脳会談には任国の大使を同席させるのは慣例だ。  だから私は書いた。  河野大使を日本で遊ばせるな、と。  税金を使って帰国させたのだから、国会やメディアで現地情勢を説明させよ。 北方領土問題に関する今後のわが国の対応策について語らせろ、と。  その直後に河野大使が急遽帰任する事が発表された。  しかも一時帰国の時と違って、こっそりと逃げるように帰任している。  それを聞かれた前原外相の言葉はあまりにも歯切れが悪い。  日露首脳会談の実現に向けて現地で本格調整を行う事が必要だという。  これはウソだ。河野大使ごときにメドベージェフ大統領を説得して首脳会談 を実現させるような力はない。  メドベージェフ大統領が歯舞、色丹2島をも訪問するという動きがあるので 情報収集に当たらせるという。  これもウソだ。いくらなんでもAPEC前にメドベージェフ大統領が立て続 けに他の北方4島を訪れる事はない。  この事は11月8日の朝日のインタビューに答えるワレリー・キスタノフ極東 研究所日本研究センター長も言っている。  「それはないと思う。情勢を更に先鋭化させることは、ロシアにとっても 意味はない」、と。  そもそも河野駐露大使の一時帰国は何だったのか。わずか4日で帰任させた 理由は何だったのか。  まさか私の書いたものを読んで10日以上も国内で遊ばせておくわけにはいか ないと考えたのではないだろうな。  まさか河野大使を長期滞在させておけば国会やメディアに呼ばれてしゃべら され、ボロを出してしまう事をおそれたのではないだろうな。  まさか現地情勢を聞くためだけに税金を使って呼び戻したのではないだろうな。  まさか、ロシアが態度を硬化させ日露首脳会談ができなくなる事をおそれた 菅・仙谷が、前原外相に早く返せと命じたのではないだろうな。  それをにおわすように前原外相は、「首相官邸と相談して帰ってもらう判断 をした」(11月8日読売)、と述べている。  しかしそのいずれであっても支離滅裂である。  おかげで今度の河野大使の一時帰国で見えてきたものがある。  一つは菅・仙谷と前原の亀裂だ。  政権維持のため何事も穏便に済ませようとする菅・仙谷は、思いつきで強硬 発言を繰り返す前原外相に手を焼いているのではないか。両者の間の亀裂が どんどんと広がりつつあるのではないか。  もう一つは外務官僚と民主党政治家との関係である。  官僚と仲良くなってしまった菅・仙谷民主党政権のことだから岡田前外相に しても前原現外相にしても、外務官僚の言いなりになっているのではないか という印象を持ちがちだ。  しかし今回の河野大使の取り扱いを見ていると河野大使は完全に面目を潰さ れている。まるで小僧の使いだ。  これは前原外相が外務官僚を見下しているという事ではないのか。  民主党政権と外務官僚の間に外交に関する信頼関係が構築されていないの ではないか。  日本外交の迷走は今後も避けられないだろう。                              了

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