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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

鈴木宗男が明かした中川一郎の自殺の真相
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■  天木直人のメールマガジン2010年10月24日発行第161号 ■       ===============================================================           鈴木宗男が明かした中川一郎の自殺の真相     ===============================================================    発売中の月刊「新潮45」11月号に、中川一郎の自殺の真相を明らかに した鈴木宗男の手記が掲載されている。  中川一郎とは中川昭一元財務相の実父であり1982年の自民党総裁予備選 に出馬したニューリーダーの一人だった政治家である。  その中川一郎が1983年に自殺した時、その死については他殺説も含め 様々な憶測が流された。  しかし今日に至るまでその真相は定まっていない。  そんな中で中川一郎の秘書であり側近であった鈴木宗男が沈黙を破って初め て真相を語ったのだ。その衝撃度は大きい。  鈴木宗男は収賄罪で実刑が確定し、今まさに収監されようとしている。 その手記で自ら語っているように、その前に真実を語っておきたいという。  私はその言葉を額面通りに受け取ってよいと思っている。彼は真実を語って いる。  鈴木宗男は中川一郎の自殺の理由を特定しているわけではない。  彼が明らかにしたことは、中川一郎がロッキード事件がらみで全日空からの 収賄容疑で東京地検特捜部から事情聴取を受けていたという驚くべき事実だ。  そのために精神的重圧を受けて追い詰められていたという事実だ。  そしてそれにまつわる極めつきのエピソードを語っている。  一つは中川一郎と福田赳夫の知られざるエピソードだ。当時中川が東京地検 特捜部から事情聴取を受けていた事は福田赳夫以外に知る者は限られていた。 ある日中川は福田赳夫邸を訪れ、へべれけに酔っ払って福田赳夫元首相の前で こう言ってつかみかからんとしたという。  「東京地検から事情聴取を受けたというネタを脅しに使って、俺を散々利用 するだけしやがって」、と。  酔いから覚めた中川は、自民党最大派閥の領袖に対する取り返しのつかない この暴言を悔いたという。自分の政治生命の終わりをさとったに違いない。  さらにまた中川はもう一つの暴言を吐いた。「俺はつかまらない。鈴木が罪 をかぶることになっているから」と人に語っていたという。中川の秘書で金庫 番であった鈴木宗男を指しての発言だ。  かつて仕えた主人である中川にとっても、そして自分自身にとっても、 決して名誉ではないこのようなエピソードをあえて公開する事によって鈴木 宗男はこう言っているのだ。  中川一郎は収賄容疑でつかまるのではないかという重圧で完全に精神的に 追い込まれていた。その重圧が彼を死に追いやったのだ、と。  検察に調べられ、起訴されるかもしれないという恐怖感、不安感が、人間の 精神にどれだけの重圧を加えるか、そのような体験のない善良な国民も、その 事に想像をめぐらせて欲しい、と。  ここからは私の考えである。  犯罪人となることは政治家にとってはもちろん命取りである。  しかし我々一般国民にとってはもっと大変だ。容疑者となった時点で社会的に 抹殺される。  政治家のような影響力のある人間でも重圧を受けるのだ。  何の力もない一般国民がいくら冤罪だと叫んでも助けてくれる者はいない。  だからこそ我々は罪を犯すような真似はしてはいけないのだ。  だからこそ人を起訴し、裁く検察や裁判所は、真実のみを唯一のたよりに、 人を公正、公正に訴追し、裁かなければならないのだ。  それだけではない。  間違って誤った判断をした時は、それを素直に認め、自らの将来を失って までも責任を取らなければならないのだ。  本来、人が人を訴追し、裁くということはそれほど厳粛かつ困難な事である。  そのような峻厳な任務は、その厳しさを知った上でそれを天職として選ぶ、 そのような検察官や裁判官に任せるべきなのである。  検察・司法の民主化という名のもとに、抽選により一般市民を無理やり検察 や裁判に参加させることにした、司法官僚主導の司法制度改革は、大きな間違い だ。  一般国民は、そんな俊厳な任務を軽々に引き受けるべきではないのだ。 ましてや好奇心や懲罰心だけでそれを行なってはいけない。  検察や裁判の民主化は重要だ。しかしそれには可視化の実現をはじめとした より簡明、適切な方策がいくらでもあるはずだ。  それらを行なおうとしないのは検察・司法官僚が自らの特権を失いたくない からである。官僚主導によるみせかけの民主化なのである。  そして民主化よりももっと重要なことがある。  それは公正、公平性であり、正義の実現である。  現実はどうだろう。  政治とカネの問題に限ってみても、検察と時の権力のもたれあいによって どれほどの不公平が行なわれてきたかを我々はいやというほど見てきている。  最近では日本歯科医師連盟の政治献金問題がある。  献金を受け取った橋本龍太郎自民党総裁や野中広務幹事長、青木幹雄参院 幹事長が罪に問われず、関係のない村岡兼造氏が、落選中という弱者の身で あるが故に、罪に問われた。  あの時テレビの前で流した村岡氏の悔し涙を我々は知っている。  私が言いたい事は賢明な読者にはもうお分かりだろう。  巨悪が逃れ、小悪が罰せられて一罰百戒であってはならないのだ。  今の検察・裁判のあり方には根本のところで不正義がある。  鈴木宗男は刑務所入りを前にそれを言いたかったのではないか。  それはとりも直さず小沢問題をめぐる一連の報道に対する鈴木宗男の痛烈な 批判でもある。                             了

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