□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年10月21日発行第156号 ■ =============================================================== 財政再建に見せる英国と日本の本気度の違い =============================================================== 今日10月21日の各紙は英国のオズボーン財務相が20日に発表した 「包括的歳出見直し」について一斉に報じている。 私にとってはこのニュースが今日の最大のテーマである。 公表された英国の歳出削減内容は驚きだ。 192の特殊法人を廃止し、公的部門600万人の労働者のうち49万人 の人員削減を行なうという。 さらに驚くのは国防費の8%削減である。 かつてこのメルマガでも書いたが、英国の軍事費削減については米英同盟 にかかわる国論を二分する問題でもあった。米国の介入が予想されるという 報道もあった。 それでもキャメロン首相は最終的に歳出削減を優先したという(21日 朝日新聞)。 因みに週刊ニューズウィーク誌日本語版10月20日号では、ドイツも フランスもイタリアもすでに軍事費を大幅に減らす方針を決めていると報じて いた。 米国がもっとも信頼できる同盟国の英国までもが、米国の反対を押し切って 削減に踏み切ったということだ。 実はこの大胆な歳出削減の公表にはすでに伏線があった。 10月15日の読売新聞が、エリザベス女王が王室職員約1200人を慰労 する恒例のクリスマスパーティを自粛したという記事を配信していた。 日本と違ってエリザベス女王は文字通り元首である。そのエリザベス女王が 職員の慰労さえも自粛したのだ。 英国の歳出削減の大方針はこの時に決まったと言っていい。 ひるがえって日本はどうだ。 10月27日から「事業仕分け」の第三弾が始まるとメディアが大騒ぎ をしている。 しかし報道を見る限りその見通しはお寒い限りだ。 事業仕分けで有名になり大臣にまでなった蓮舫大臣が、財源捻出の期待は しないでくれ、などと10月14日の記者会見ではやばやと予防線を張った という(15日各紙)。 公務員制度改革担当大臣にもかかわらず、連合に押し切られて人事院勧告を 超える公務員の給与削減を出来ないでいるという(週刊文春10月28日号)。 一般サラリーマンがこれほど給与削減やリストラに苦しんでいるというのに、 である。 極めつけは今日10月21日の産経新聞である。 田母神元航空幕僚長をはじめとする自衛隊OBが防衛予算を3割増やせば必要 最小限の自主防衛力が備えられると試算し、これを近く発表するという。 まさか来年度の予算編成までに発表されると言われている菅・仙谷民主党 政権の「新防衛計画の大綱」において、自衛隊拡充の予算が計上されることは ないだろうと思うが、尖閣諸島問題の迷走の結果、あるいは防衛省予算が強化 されるかもしれない。 メディアは尖閣問題や小沢一郎の政治と金の問題ばかりを報道しているが、 菅・仙谷民主党政権の本当の問題は今の日本の最大の問題である行財政改革が 何一つ進んでいないことにある。 今回の英国の「包括的歳出見直し」の発表は「事業仕分け」などという パフォーマンスをしなくても、政治意思と決断力があればできるという事を 証明してくれた。 「事業仕分け」で持ち上げられた蓮舫と言う政治家の真贋がもうすぐ明らか になる。 それは取りも直さず菅・仙谷民主党政権の真贋が明らかになるということだ。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)