□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年10月15日発行第147号 ■ =============================================================== あえて問う。「尖閣諸島に領土問題は存在しない」とはどういう意味か、と。 =============================================================== 「いまさら聞けない事」という言葉がある。 すなわち、皆が当たり前のように使っている言葉の正確な意味を自分は 知らない。しかし皆があまりにも当然の如くその言葉を使っているのであえて それを聞くと恥を書くから聞き出せない、という意味の言葉だ。 最近やたらにメディアや国会答弁で使われる「尖閣諸島に領土問題は存在 しない」という言葉もその一つに違いない。 私がこの言葉をはじめて知ったのは、蓮舫議員が「領土問題がある」とどこ かで発言し、それをたしなめられてすぐに「領土問題はない」と言い直した、と いう事を、いつかの新聞の記事で読んだからだ。 私は尖閣諸島については「領土問題はない」のに、北方領土や竹島には 「領土問題」や「領土紛争」がある、という言葉の使い分けがわからない。 もしこの言葉の使い分けを正しく知っている読者がいれば教えてもらいたい。 勉強させてもらう。そしてそれを他の読者とともに共有したい。 尖閣諸島は「領土問題」ではない、と政府・外務省が言う理由は、日本が 尖閣諸島を実効的支配をしてきたから日本の領土であることは自明である、 という意味だろう。 中国側も日本の領土として認めていたのに、経済的利権に気づいて1971年 に急に領有権を主張した。それは国際法的には認められないという意味だろう。 領土問題があるといってしまえば譲歩する事になる。だから領土問題はない と突っ張るしかない、という意味だろう。 更に言えば、北方領土や竹島は、日本側からすれば同様に明らかな日本の領土 であるが、すでにロシアや韓国が実効支配している。それを取り戻すための領土 権争いであるから、日本が実効的支配をしている尖閣諸島とは違う。こういう 意味だと思う。 しかし、それらは官僚が考え出した屁理屈だ。それをすまし顔で繰り返す前原 外相には官僚以上の外交は期待できない。 主権国家の双方が領有権を互いに主張し合うようになった時点で領土問題は 存在する事になる。領土紛争は始まる。 それを「領土問題はない」と一方的に言ってみたところで何の意味も無い。 中国の立場は微塵も動かない。 領土問題はある、いや、ない、と言った官僚の言葉遊びにうつつ抜かすのでは なく、領土問題についての日本の毅然とした立場を明らかにし、それを中国や 国際社会に認めさせる努力をあらゆる角度から行なう。それが外交だ。 その外交力がないから言葉遊びに堕して行くのだ。 前原外相は官僚主導の外交から脱却できない無能な政治家の典型である。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)