□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年10月10日発行第138号 ■ =============================================================== メディアから消えた枝野幸男民主党幹事長代理 =============================================================== 枝野幸男という民主党の政治家がいる。 いまでこそ民主党幹事長代理という「一兵卒」であるが、この間までは 民主党幹事長として選挙と金と党内人事を取り仕切っていた菅・仙谷民主党 政権の重要議員だ。 その前は行政担当相として事業仕分けで名を馳せ、あのレンホウ議員を世に 出した親分だった。 枝野議員がテレビに出ない日はなく、その発言が新聞に取り上げられる日は ないほど活躍していた。 ところが最近まったくその名前がメディアに出なくなった。 なぜか。 それは尖閣問題で中国を悪し様に言い、政府の大方針である中国との 「戦略的互恵関係」を全面的に否定する発言を行なったからだ。 これほどの問題発言はなかった。 少なくとも謝罪発言か、菅首相からの厳重注意発言があって当然であった。 ところが菅政権はこの枝野発言を巧みに隠蔽した。 菅首相が、仙谷官房長官が、そして前原外相までもが、中国は日本にとって 重要な国であり、中国との戦略的互恵関係は国是であるという発言を異常なまで に使い始めるようになった。 ところが、彼らが枝野発言を謝罪し、枝野議員を叱る発言はどこを探しても 見当たらない。 私の知る限りでは国会審議においても、枝野発言の責任を追及する議員は、 民主党はもとより、野党議員のどこにもいなかった。 なによりもメディアが、菅首相、仙谷官房長官、前原外務大臣に対し、それで は枝野発言をどうするのか、枝野議員に厳重注意するのか、といった質問を まったく行なおうとしなかった。 そして枝野幸男という民主党幹部を毎日のニュースから消してしまった。 もちろん、ほとぼりがさめたら枝野議員は出てくるであろう。 メディアはその時、何もなかったかのように枝野議員に接するに違いない。 これを要するに、今の日本の政治は、表面的な対立とは裏腹に与野党の間で 馴れ合っているのだ。 本当の野党がなくなっているのだ。 そしてそのような総与党状況の中で、メディアもまた政治家たちと同衾状態に あるのだ。 これほどまでに日本の状況が問題を抱え、国民のための本物の政治が求められ ているというのに、まるで緊張感が伝わってこない。その理由はここにある。 果たして枝野議員は、いつ、どのような形でメディアに再登場するのだろう。 私はそれを興味を持って注視している。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)