□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年9月17日発行 第99号 ■ =============================================================== サウディアラビアを食い物にする米国 ================================================================ サウディアラビアとかけて日本と解く。その心は。 どちらも米国軍需産業に食い物にされている。 9月13日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが、米国が サウディアラビアに対し約5兆円の兵器を売却する計画を週内にも米議会に 通告する見通しだと報じたという。米国の武器売却計画では史上最大の規模 だという。 この事を15日の産経新聞などが報じていた。 その内訳はF-15戦闘機84機の新規売却と70機の改良のほか、 イラク戦争でも使われた数々の攻撃ヘリや特殊部隊のヘリなどだという。 こんな大量の最新兵器が今のサウディアラビアに必要か。 読売新聞の記事によれば、今度の売却には長距離攻撃兵器が含まれていない ことや、イスラエルがすでに米国の最新高性能戦闘機F-35を導入する方針 であることから、少なくともイスラエルの反発はないだろうという。 馬鹿な事を言うんじゃない。 サウディアラビアがイスラエルを標的に武器を購入するとでも言うのか。 米国がそれを認めるというのか。万が一サウディアラビアがイスラエルと 戦ったとしても勝ち目はない。 まさかサウディアラビアが他の中東諸国との戦いに備えて購入したとでも 言うのか。イラクやエジプトがサウディを攻めてくるとでも言うのか。 王制サウディアラビアの転覆を狙うテロと戦いはあり得る。しかしそんな 戦いに戦闘機は役に立たない。 要するにまったく無駄な武器購入をさせられているのだ。 この売却計画が予定通り進めばボーイング社は米国44州で計7万7000 人の雇用が確保できるという。 結局はサウディアラビアの米国武器購入は、金融破たんで行き詰まった米国 経済への支援なのである。 そう考えた時、真っ先に思い浮かぶのが日本だ。 日米同盟はもはや米国が日本を守るための同盟ではない。米国の「テロとの 戦い」に協力する同盟だ。 米国から購入する最新兵器も、国民を守るためではない。守るようには なっていない。「テロとの戦い」に使われ、米国に代わって中国を牽制する 役割を任せられているのだ。 不必要な高い買い物である事はサウディアラビアと同様だ。 米国経済への財政支援である事も同様だ。 しかしサウディアラビアと日本では決定的な違いがある。 サウディアラビアは王族支配の非民主国家だ。 武器購入予算は石油で得たあぶく銭だ。 日本は違う。 まがりなりにも民主国家だ。 その予算は格差社会の拡大で苦しんでいる低所得者からも容赦なく召し上 げる血税である。 同じ米国に食い物にされる国でも、日本の場合のほうがはるか深刻で たちが悪い。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)