□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年9月17日発行 第98号 ■ =============================================================== メディアの関心は小沢よりも菅に向かわなければならない ================================================================ このメルマガを書いている17日午前の段階では菅新政権の人事は発表 されていない。しかし、噂される党、閣僚の顔ぶれを見る限り菅新政権の 目指すものははっきりしたようだ。 それは政治評論家などの言葉を借りれば、小沢政治からの完全なる決別に 腹を固めた事と、世代交代だという。私もそう思う。 そこで、その顔ぶれで出発した菅新政権をめぐる評価である。 もしメディアが反小沢に偏向しているのなら、メディアで流される政局評論 は小沢グループの反撃とか、小沢グループは挙党体制になぜ協力しないのか、 小沢は代表代行をなぜ引き受けないのか、そんな事をやっている場合か、など という論説が繰り返されるであろう。 そしておそらくそういう報道が続くであろう。 しかし、もしメディアが本当に日本の将来や国民の事を考えるのなら、 菅新政権の政策にこそ焦点を当てなければならない。 おそらくそうならない。菅政権の政策に焦点を当てると菅新政権を批判する しかないからだ。 小沢の息の根を止めないうちに菅新政権を叩いて小沢に復活のチャンスを与え るわけにはいかないからだ。 しかし菅新政権は日を追って矛盾を露呈していくだろう。 その矛盾はあまりにも複雑でここでは書ききれない。 たとえば今日(9月17日)の読売は一面で、一旦は廃止されたはずの教員免許 更新制度の継続を文部科学省が決めたとスクープしている。 たとえば今日の読売、産経は、八つ場ダム建設中止表明から一年経ってなお 先行きが不透明であると報じている。 これらは、消費税増税で自民党と民主党が一致していることと相俟って、保守 大連立の方向に急速に向かっていく事を示しているのだ。小沢の後は労働組合が 切り捨てられる。 そして保守大連立を支えるのは官僚たちである。 菅新政権の政策は外交に目を向けるとその矛盾はもっと深刻だ。 いくら前原外相が誕生して対米従属外交を進めようとも米国の菅新政権に 対する見方は覚めたままである。というよりも米国は日本への関心を急速に、 そして後戻りできないほど低下させている。 クリントン米国務長官が8日の演説でアジアの同盟国として韓国を日本より 先に言及した事が憶測を呼んだと思ったら、あれは意図的なメッセージだ、 ジャパンパッシングだ、などと米国関係者から言われる始末だ(9月16日 読売)。こんなことは今までにはなかった。 その一方で最近の中国の強硬姿勢は明らかな菅民主党政権に対する メッセージだ。中国は菅民主党政権を評価していない。反感すら感じられる。 米中双方から相手にされなくなってはおしまいなのに、北方問題についての ロシアの強硬姿勢はエスカレートする一方だ。 イランは日本の原子力発電も懸念対象だ、などと言い始めた。親米、反米で せめぎあっている中東では、ここまで対米従属になってしまった日本の政治的 影響力はゼロだ。 要するに日本外交は孤立しつつあるのだ。 菅新政権の政策にメディアは目を向けよ。 そうすれば菅新政権を支持している7-8割の国民のほとんどが菅政権に 失望する。日本は大丈夫かと。 その時まで小沢グループは結束を保てるのか。保てるとしても小沢が菅に 代わって正しい政治を本当に実現できるのか。 それはわからない。 しかしはっきりしている事はたとえ岡田などに世代交代しても日本は救われ ないということだ。 世代交代した先が見えない。 菅も小沢も、そして勿論自民党の中のどの政治家も、そしてたとえ世代交代 しても、正しい政策を実行できない指導者が見当たらない。 日本の政治はそこまで来ているということだ。 その認識から新しい政治が生まれてくると思う。 そこから日本の再出発が始まる事になる。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)