… … …(記事全文8,260文字)EU委員会・理事会の【賠償融資】の失敗
20日のYoutube動画でも触れましたが、今月18日~19日にかけてベルギーのブリュッセルで開催されたEU首脳サミットで、ロシアの凍結資産を没収し、それを基にウクライナへ融資を行う、所謂【賠償融資】案が否決されました。初日の会議前にメディアを前に「私は、本日決定を下さなければならないという欧州理事会理事長の立場に完全に同意します。そしてその決定が下されるまで、我々は退席しません」と発言したEU委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長ですが、報道によれば16時間にも及ぶ議論の末、結局否決され、大恥をかく結末となりました。
しかしこの敗北を認めたくないのか、ライエン委員長と運命共同体のアントニオ・コスタEU理事長は、代替案となる900億ユーロの支援をEU予算内から捻出するという案を採択したと発表しました。EUは本来、重要案件の決議には全会一致が原則ですが、ハンガリー、スロバキア、チェコはこの案に反対を表明しています。ですので、残りの国々で負担するという流れになった模様です。本来民主主義国家の集合体であるべきEUを支配するEU委員会やEU理事会は、全体主義的体質が色濃く、私が21日時点で調べた限り、正式な賛成・反対票数の公表を行っていませんので、とりあえず「模様」とお伝えしておきます。
フォン・デア・ライエン委員長は、18日のメディアを前にした会議前の会見で、ウクライナには「今後の2年間で1370億ユーロ(約25兆円)の資金が必要です」と明言していましたが、最終的に決まった900億ユーロ(約17兆円)では不足します。今年の9月にロシアの国営通信TASSが報じたところでは、ウクライナが戦争を継続するには1年間で600億ユーロ(約11兆円)が必要とされるとのことですが、これを基準に考えると、900億ユーロということは、つまり1年半の戦争資金に相当します。
米国では来年11月に中間選挙が行われますが、EU委員会の狙いは、1年間は確実にキエフ政権を維持させ、米中間選挙でグローバリスト政権の台頭を目論み、選挙後はトランプ政権を議会が追い込み、米国を再びウクライナ戦争へ巻込みたいというザックリとした願望が垣間見れるように思います。
メディア・ロシア専門家の反応
EUのニュース専門のメディアプラットフォーム「ユーロアクティヴ」(Euroactiv)は「今回の出来事は、EU委員長の政治的影響力の限界と、法的に信頼性の低い、政治的な物議を醸すアイデアを過度に推進することのリスクを明らかにした」と指摘し、「未達成の野望、公的な敗北、そしてフォン・デア・ライエン氏とメルツ氏にとっての「屈辱的な政治的敗北」で終わった」と総括しています。
またロシアのサンクト・ペテルブルグ大学国際関係学部欧州研究科の教授で、ディスカッション・クラブ「ヴァルダイ」専属の専門家でもあるスタニスラフ・トカチェンコ氏は(Stanislav Tkachenko※写真)、皮肉を込めて次のように指摘しています:
「EU首脳サミットの暫定的な結果は、フォン・デア・ライエン委員長にとっての個人的な敗北です。今やEUの官僚達は「撃墜されたパイロット」と言えるでしょう」
因みにトカチェンコ教授は、ライエン委員長のロシア凍結資産のウクライナ支援への活用プランが失敗した理由として、ロシア中央銀行が今月12日に1850億ユーロのロシア凍結資産を保有するユーロクリア(Euroclear)を相手取り、モスクワ仲裁裁判所に約36兆円の損害賠償請求を申し立てたこと、そして米国の安全保障戦略(NSS)やトランプ政権の発言などにみられるEUへの圧力を理由に挙げています。
こういった米露による外的要因の他に、ベルギー、ハンガリー、スロバキア、イタリア、マルタ、ブルガリア、チェコの7カ国がロシア凍結資産の「賠償融資」での利用に反対したことが大きかったと思われます。更に言えば、実はその他の国々も表立ってはいないものの、ロシア凍結資産没収に否定的だったという情報が現在多数報じられています。意外なあの国がライエン委員長らの足を引っ張ていたという事実は、如何に欧州の戦争継続派の結束が脆いかを世界に露呈させてしまったようです。




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