… … …(記事全文3,336文字)世界の国際主要通貨は米ドル、ユーロ、日本円、英ポンド、豪ドル、スイスフランですが、この中で世界の基軸通貨とされているのは米ドル(アメリカドル)だけです。
正確には「いまのところ」という言葉を追加したほうがいいかも知れません。
ドルの前の世界の基軸通貨はイギリスのスターリングポンドでしたが、二度の世界大戦で大英帝国の海軍力、市場としての地位は低下し、アメリカに覇権を取って代わられることになりました。
1944年のブレトン・ウッズ体制(金・ドル本位制)により、アメリカドルはドルは1オンス35ドルに固定され、米ドルが金と交換可能な唯一の通貨だったのですが、アメリカ経済の低迷と金流出により、1971年8月にニクソン大統領が金とドルの交換を一時停止し、変動相場制に移行してしまいます。こうなると世界の基軸通貨たる地位が揺らいでアメリカが窮地に落ちてしまったのですが、
1974年、サウジアラビアとアメリカの間でサウジは石油を米ドル建てで低価格、安定的に供給し、アメリカは、サウジアラビアの安全保障を確約するという
ペトロダラー合意(オイルダラー・the US-Saudi petrodollar deal)がキッシンジャー米国務長官とサウジのファハド皇太子(当時・のちに国王)との間で締結されました。
- サウジアラビアは、石油販売価格をすべて米ドル建てで設定する。
- サウジアラビアは、石油収入の余剰分を米国債に投資する。
- 米国はサウジアラビアに武器供与と安全保障の保証を提供する。
期間は締結から50年間でした。これにより1975年までに、OPEC加盟国はすべて、石油供給価格を米ドル建てのみとし、石油収入を米国債で保有することに合意しました。世界各国は原油を手に入れるにはアメリカドルを準備しなければならず、アメリカは原油の決済通貨ドルとしての世界基軸通貨の立場を維持することができました。
2000年代に入りペトロダラーに対する挑戦する勢力が登場しました。イラク、イラン、リビア、ベネズエラがその代表的な国家でした。アメリカは2003年のイラク戦争でサダム・フセイン政権を崩壊させ、2011年にはリビアのカダフィ政権を倒しました。残りはイラン、ベネズエラです。
ベネズエラ政府とベネズエラ国営石油会社PDVSAは、アメリカの経済制裁によるドル決済制限と自国通貨ボリバルのハイパーインフレを回避するため、民間契約業者への支払いに中国人民元を採用しており、イランは宿敵アメリカのペトロダラー体制を崩壊させるため、自国の石油の90%を中国に輸出し、中国は「ペトロ人民元」を推進してくれる友好国イランとの取引を歓迎し国際価格よりも安い特別価格でイラン原油を人民元で購入しています。
ペトロダラー合意から50年を迎えた2024年、サウジはペトロダラー合意を更新せず、米ドル以外の通貨での石油輸出を認めるようになり、世界各国は原油を手に入れるにはアメリカドルを準備しなければならないという従来の大原則が変わってしまったのです。中国やロシアが主導し、欧米主導の国際秩序に対抗している10か国で構成されるBRICS(ブリックス)加盟国は貿易での自国通貨決済の促進を図っており、G7の対抗軸になりつつあります。
2026年、今年になってアメリカ軍の軍事作戦により中国に傾倒するベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領と妻が首都カラカスで拘束されアメリカ・ニューヨークの拘置施設へ送致、
ベネズエラの政権運営はアメリカの手中となり、イランは現在、軍事作戦が進行中です。
おわかりいただけたでしょうか?
ペトロダラー体制に対して挑戦してきた、イラク、イラン、リビア、ベネズエラの反米政権をアメリカは本気で潰しに掛かっているのです。これは共和党だろうが民主党だろうが同じことです。ペトロダラー体制の維持はアメリカドルの確固たる国際的地位を守るためのアメリカにとっての核心的利益だからです。そもそも国際法を屁とも思っていないトランプはやり方が露骨なだけです。イラク、リビア、ベネズエラについてはすでに完了です。アメリカは伸長してきたBRICSを抑え込み、G7の頂点として世界の盟主であり続けたいのです。



