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高安カミユ(保守系コラムニスト)

高安カミユ

消えた伝統と暴走した司法~トニー・ブレアがイギリスに仕掛けた時限爆弾

イギリスの労働党首相トニー・ブレア(1997〜2007年)が行った憲法・統治機構改革の全貌、その背景、そして現代への影響について、批判・擁護双方の視点から深く考察する。
個人的にはブレア首相は好きではないのだが、私情を捨てて、割と公平に良い点も悪い点も網羅した上で、ブレア改革が現代のイギリス与えた影響を論じることとする。

1. ブレア首相が行った憲法改革の全貌

ブレア政権が10年間で行った改革は、「無血の憲法革命」と呼ばれるほどドラスティックなものであった。主に以下の5つの柱から成り立っている。

① イングランド銀行の独立(1997年)
政権交代直後、財務大臣のゴードン・ブラウンが主導し、中央銀行であるイングランド銀行に金利(政策金利)の決定権を完全に委譲した。それまで金利は、選挙で選ばれた財務大臣が政治的判断で決定していたが、これを「専門家」の手に委ねる形とした。
日本の日銀と同じようなものを作ったことになる。
しかも、イングランド銀行の総裁人事権は、実質的に「財務大臣だけ」が握っていることもあり、日本より政治色が反映されやすい。
日本の場合は衆議院と参議院の両方で同意をもらわないと、実際に任命することはできない。


② 地方分権(ディヴォリューション)の推進(1998年〜)
スコットランド、ウェールズ、北アイルランドに独自の議会や政府を創設し、内政に関する権限を大幅に委譲した。これにより、イギリスは中央集権国家から連邦制に近い形へと変貌を遂げた。
この結果、スコットランドや北アイルランドでは独立の動きが強まり、連合王国解体の危機が近づいてしまった。


③ 人権法の制定(1998年)
「欧州人権条約」の内容を国内法に取り込んだ「1998年人権法」を制定した。これによりイギリスの裁判所は、政府の政策や法律が「人権基準」に適合しているかを審査する強力な武器を手に入れた。
この件こそが非常に重要で、後に大きな影響を与えることになる。


④ 貴族院(上院)改革(1999年)
何百年も続いていた「世襲貴族」の議席を原則として廃止した(妥協案として92議席のみ残存)。代わりに、功績のあった人物が任命される「一代貴族」が中心の議会へと移行させた。
これもある意味、むしろより日本の現状のシステムに近づいたとも言えるが、良くも悪くもイギリスは、貴族院があったからこそ安定していた。
保守派の哲学(エドマンド・バークの思想など)では、「世襲貴族は、選挙の短期的な人気取りに左右されないからこそ、国家の長期的な利益を考えて衆愚政治(下院の暴走)を止めるブレーキになれる」と、良くも悪くも考えられていたし、実際に、そのような面はあった。しかし、そのブレーキが壊され、政権に任命された「今風の有識者」ばかりになったことで、上院の格式と独立性が失われた。また、世襲貴族がいなくなった穴を埋めるため、ブレア首相は自分の息のかかったリベラル系の学者や、労働党への大口献金者、政権のイデオロギーに近い人物を次々と「一代貴族」に任命し、貴族院は一気に左傾化した。


⑤ 最高裁判所の創設と司法の独立(2005年憲法改革法)
それまでイギリスには独立した「最高裁判所」が存在せず、上院(貴族院)の法服貴族(裁判官)が最高裁判所の機能を兼ねていた。すなわち立法と司法の混在である。ブレアはこれを廃止し、2009年に完全に独立した「連合王国最高裁判所」を新設した。同時に、裁判官の任命権を政治家から引き離し、独立した「裁判官任命委員会」に移管した。そして、この裁判官任命委員会のメンバーは、政治から独立した『公募選考と司法界の推薦』によって選ばれるようにした。しかし、これが大問題の根源で、公募といっても一般人から誰を選ぶかは、政治家ではない。だから、「政治から独立した」と言えば聞こえは良いが、選挙で選ばれていない人が選ぶことになった。
そのため政治は最高裁判所裁判官の人事権を完全に失った。



ならば、なぜブレアは、このような改革を行ったのか?英国の失敗と日本の防波堤。
この先、ブレア改革の誤算に迫る!

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