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高安カミユ(保守系コラムニスト)

高安カミユ

ナフサ目詰まりの深層と高市総理でも抜けなかった伝家の宝刀。目詰まりを即座に解消できた究極の打開策とは?

5月下旬の世論調査において、きわめて興味深い、そして現代日本の「急所」を突くデータが示された。イラン情勢の緊迫化に伴うホルムズ海峡の緊張に対し、政府が発した「ナフサ(プラスチックやインクの原料)の供給および備蓄に問題はない」という説明について、国民の実に64%が「納得できない」と回答したのだ。

マクロな数字上は「備蓄は十分」と繰り返す高市内閣と、肌感覚として強い危機感を抱く市場・国民。この「64%の不信感」の正体はどこにあるのか。

結論から言えば、高市内閣も市場も、どちらも嘘をついていない。統計上の総量としてはナフサは足りているが、なぜか届いていない企業があるのだ。

今、日本で起きている「ナフサ」の深刻な目詰まりの理由は、単に船が来ないことだけではなかった。「物理」「制度」「心理」の3つの罠が複雑に絡み合っていた。

まず、「物理の罠」だ。日本はナフサの約8割を中東に依存していたが、ホルムズ海峡の封鎖により輸入量が約8割激減した。商商船はアフリカ南端を回り込む大迂回を強いられ、移動日数は大幅に増加した。さらに戦時保険料は10倍に跳ね上がった。政府は米国からの代替調達をアピールするが、中東の膨大な穴をすべて埋めるのは不可能なのが現実だった。

次に、「制度の罠」だ。政府は「石油の備蓄は4ヶ月分以上あるから平気」と繰り返すが、ここには致命的なバグがあった。国の法律(石油備蓄法)が守っているのは、あくまで「燃料(原油やガソリン)」だけだった。化学原料であるナフサそのものは、備蓄の対象外となっていた。「原油はあるのに、それをナフサに精製する国内工場のスピードが追いつかない」ため、現場では実質20日分程度で在庫が底を突きかけていた。

傷口を広げたのが、「心理の罠」だ。5月12日、カルビーがナフサ不足(インク溶剤の枯渇)を理由に「ポテトチップスを白黒パッケージにする」と発表した。これが市場の恐怖に火をつけた。「次はうちの製品が作れなくなる」と恐れたTOTOやLIXILなどの大手が一斉に過剰防衛に走り、実需を遥かに超える「ダブつき発注(二重発注)」を入れた。実は市場にはまだ1.8ヶ月分の在庫があるにもかかわらず、この心理反発による買い占めが物流網を完全にパンクさせた。

なぜ、データ上の総量は足りているのに、これほどの目詰まりが起きるのか。理由は簡単で、市場経済において「総量ぴったり」では必ず偏り(目詰まり)が起きるものだからだ。

仮に国民1人に1本コカ・コーラを買わせるとする。日本の人口に合わせて1億2000万本のコーラしか国内になかった場合、必ず品切れのスーパーやコンビニが多発する。「隣町のコンビニにはまだ在庫があるが、この町のコンビニは全て在庫なし」などの状況になるはずだ。各スーパーやコンビニで、過剰とも言えるほど潤沢に陳列(流通在庫)を抱えていないと、国民全員がコーラを買うことはできない。つまり、市場経済の流動性を維持するには「1億2000万本」の総量では全く足りないのだ。

もし1億2000万本「だけ」で国民全員に行き渡らせる対応をするとしたら、方法は一つしかない。配給制にすることだ。スーパーやコンビニではなく、市役所で配布し、受け取る際には身分証を提示して二重買いができないようにする。こうすることで初めて、コカ・コーラ1億2000万本を、国民一人一人に過不足なく渡すことができる。

しかし、ナフサの場合は、この「川下(末端)」での配給制ができなかった。ナフサにはグレードが沢山あり、現代の複雑な産業構造において、「どの工場に、どのグレードのナフサを何トン配給するか」を官僚が机上で完璧にコントロールすることは不可能だった。政府が配給制に「踏み切らない」のではなく、複雑すぎて「踏み切れない」というのが現実だった。


しかし、方法が無かったわけではない!


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