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鳥集徹(ジャーナリスト)

鳥集徹

#146 「病院」よりも「家」がいい ~いきなりステージⅣのがんが発覚した叔母の闘病記⑧~

5月15日、ホームホスピスに入所した1日目は慌ただしかった。介護タクシーのドライバーさんに叔母を車椅子で運んでもらう間に、私は荷物を部屋に運ぶため駐車場と入口の間を何往復かした。それが終わった後、施設の人に教えてもらって、叔母のもとへ向かった。

叔母の部屋は1階の奥から2番目にあり、「マスカット」と名付けられていた。壁、床、ソファー、ロッカー、チェストがブラウン系で統一されており、広々としてとても清潔な部屋だ。大きな窓があり、そちら側を頭にして電動ベッドが置かれている。そして、すぐ近くに広くて清潔なバリアフリートイレがある。特別にポータブルトイレも、ベッドサイドに置かれていた。

叔母はすでにベッドに横たわっていた。「部屋はどう? 落ち着きそう?」と聞くと、「まだ慣れてないから、これからだね」と答えた。私が運んだ荷物は、介護タクシーに一緒に乗ってきたS子さんやA子さんが、ロッカーやチェストに収納してくれていた。

落ち着く間もなくK医師がやってきて、ホスピスでの初めての診察が始まった。とくに変わったことはないが、気になっていたのがうんちのことだ。まだ母が介護している間のこと、便秘薬のアローゼンを飲んで、1日に何度もトイレに行く羽目になった。間に合わず漏らしてしまったこともあって、それ以来、叔母は便秘薬を飲むのを躊躇していた。そのせいで、コロコロしたうんちは出るものの、少なからず溜まっているらしく、腹がはっているようだった。

「分かりました。では、夜、液体を口に垂らす便秘薬を使ってみましょう。ここは看護師さんもヘルパーさんもいますから、トイレしたくなったら遠慮なくナースコールで呼んで、介助してもらってください。オムツに出しても、ちゃんと処理してくれますから、安心してくださいね」

同席したホスピスのホーム長で看護師のYさんも、K医師の話にうんうんとうなずいて、遠慮しなくて大丈夫ですからね」と叔母に話しかけた。しかし叔母は、オムツに排泄することに、抵抗があるようだった。

「寝たままオムツにしたことがないから、できるかなぁ。ポータブルに座らせてもらわないと、出ないような気がする。でも、脚が動かないから、ポータブルに座らせてもらうのも大変だし…」

「Nさんがポータブルトイレに座りたいときには、私たちがお手伝いします。ほんと遠慮なさらないでくださいね。Nさんがしたいことをお手伝いするのが、私たちの役割ですから」

Yさんは、叔母が遠慮しがちな性格なのを読み取って、やさしく語り掛けてくれた。施設として、できるだけ本人のしたいことを手助けしたいという意図も伝わり、身内としてYさんの言葉はとても心強かった。ただ、理想と現実は違う。実際のところ排泄の問題は、この後ホームでの叔母へのケアで、ちょっとした問題の一つとなった。

診察の後、K医師を見送るため一緒に廊下へ出ると、「おばさまの今後ことを、お話しておいていいですか」と言われ、部屋の近くのにあるダイニングスペースへ行くよう促された。テーブルをK医師、クリニックの記録係のスタッフ、ホーム長のYさん、私の4人が囲んだ。

「市民病院で画像を見られてご存じとは思いますが、叔母さまは肺と肝臓、胸椎、腰椎、仙骨に、大きな腫瘍があります。とくに肝臓の腫瘍が大きくて、大きな膿瘍もできています。叔母さまのお腹を触ると固くて、少しずつ張りが強くなっています。これは腹水というよりも、肝臓の腫瘍が大きくなっているからだと思います。そのため、突然、腹部で出血が起こり、血圧が急激に低下する可能性もあります。そのような事態も起こり得ることを、覚悟しておいてください」

3月末に市民病院で会ったときには、叔母はまだ杖を使わずに歩くことができた。しかし、叔母の脚の麻痺が急速に進み、2カ月も経たないうちに歩けなくなった。肝臓の腫瘍も大きくなっているであろうことは、容易に想像できた。

「はい、私はすでに覚悟ができています。K先生のおかげで、叔母はいい状態で維持できていて、とても感謝しています。ホスピスに入ってもK先生に診てもらえて、叔母も幸せだと思います。引き続き、何卒よろしくお願い致します」

「こちらこそ、継続して診させていただき、ありがとうございます。ホスピスのスタッフとも情報を共有して、1日でも長く叔母さまがいい状態で過ごせるよう私たちも努めますので、こちらこそよろしくお願い致します」

K医師は本当に謙虚な人柄で、なんでも話しやすい柔軟さがある。ホスピスにも継続して訪問してもらえて、叔母は本当に幸運だと思った。

 

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