… … …(記事全文5,511文字)4月8日水曜日の朝、叔母の家に行ってみると、様子が明らかにおかしかった。表情が乏しく、呂律が回らない。受け答えはできるが、意思疎通がスムーズにいかない場面があり、認知機能も少し落ちているように感じた。
「とりあえず、急いで病院へ行きましょう」
そう促すと、椅子のひじ掛けに腕の力をかけて、やっとのことで立ち上がった。電話で聞いた通り、ふらつきが酷い。杖を使っても不安定なので、私が介添えをして、ゆっくりと家を出た。
幸いなことに薬が効いたのだろう。背中の痛みはないとのことだった。追加で使っていいと言われていたアセトアミノフェンも、飲まずに済んでいる。だが、ふらつきをなんとかしてもらわないと。
車に乗せて市民病院へ行き、入り口にあった車椅子に乗ってもらった。この日の外来担当は消化器内科部長で、当初の主治医(副院長)とは別の医師だが、救急外来で処方されたロキソニンとタリージェが今日で切れてしまう。また、在宅クリニック(在宅療養支援診療所)への「診療情報提供書」と「訪問看護指示書」の作成も依頼する必要があった。
外来受付に診察券を出し、待合で渡された体温計で熱を測っていると、わざわざ看護師さんがやってきて、酸素飽和度を測ってくれた。93%と少し低めの数字が出ている。受診理由を告げると、優先的に診てくれるよう取り計らってくれた。
ほどなくモニターに呼び出し番号が表示され、診察室に入ると五十代と思しき男性医師が待っていた。痛みはなくなったが、ふらつきが酷いことを話すと、医師はこう言った。
「病気の影響と言うよりも、タリージェの副作用だと思います。いったんやめてみましょう」
やはり、タリージェのせいだったのか…。背中の痛みが多少ぶり返すかもしれないが、あまりにふらつきが酷すぎる。やめてみるという選択は妥当だと思われた。
「ロキソニンは続けて大丈夫ですか?」
「肝機能や腎機能は落ちていますが、効いているようですから、このまま続けましょう」
本人も在宅療養に切り替えることを受け入れたと話し、診療情報提供書と訪問看護指示書を作成してほしい旨を伝えると、「1階の受付に文書課がありますので、そちらで申し込みをしてください」とのことだった。
「次、主治医の先生からは17日に受診するよう言われていますが、もし在宅のクリニックで診てもらえることになったら、予約取り消しの連絡は入れたほうがいいですか?」
「はい、そうですね。病院に連絡していただければ」
診察室を出て、外来事務の人から必要な書類をもらい、清算を済ませてから文書課の受付へ向かった。順番が来て、必要書類に記入すると、係の人がこう言った。
「診療情報提供書と訪問看護指示書ができるのに、2週間ほどかかるかもしれません。用意ができましたら連絡しますので、病院へ取りに来てください」
私はこれを聞いて驚いた。病状からして、一刻も早く訪問診療と訪問看護を利用したいのに、文書作成に2週間もかかるのだ。
「そんなにかかるんですか⁉ 病状的に、あまり長く待っていられないんですが…」
「申し訳ありません。先生が書いてくれるのに、時間がかかることがあるんです」
「お忙しいとは思うんですが、その間に病状が悪化しないか心配です。係の方に言っても仕方ないことですが…。在宅クリニックからは、紹介状が出来次第、病院からファックスしてもらえれば、すぐに動くとお話をいただいています。クリニックへファックスしていただくことは可能ですか?」
「わかりました。申込書にファックス希望と書いておきますね」
がん患者が在宅療養をするには、診断や治療を受けた病院側と、在宅クリニック、訪問看護ステーション、訪問介護事業所とのスムーズな連携が不可欠だ。しかし、診療情報提供書や訪問看護指示書がなければ、動き出すことができない。
こうしたやりとりに時間がかかることが、患者や家族にとって大きな問題となる可能性もある。国は、病床数を削減して在宅療養への転換を図っている。現在推進されている医療のDX化(Medical Digital Transformation)を活用して、施設間の文書や情報のやり取りに時間がかからないよう、ぜひともスムーズな連携システムを構築してほしい。

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