… … …(記事全文6,142文字)神戸大学感染症内科教授の岩田健太郎さんが、Xでの私のポストを引用して「『2回打てば集団免疫ができる』というのが反科学で」(2026/2/15)と認めてくれたのは嬉しかった。医療ジャーナリストである私だけでなく、コロナワクチンを批判してきた多くの人も、岩田さんに賛同するだろう。コロナワクチンを国民の多くが打てば、コロナが「収束」するかのような、科学的根拠のない期待が煽られたのは、岩田さんの言う通りまさしく「反科学」だった。
この認識に関して、岩田さんと私が対立することはない。「2回打てば集団免疫ができて、コロナが、収束すると言われた」(2026/2/15)と書いた私のポストを引用して、岩田さんが「主語はだれ?誰が言ったの???」(2026/2/16)とたずねてきたので、私は菅義偉首相、河野太郎元ワクチン担当相、有名な医師や経団連等をはじめ、国民に影響を与える多くの人や組織がそのような認識を広めた証拠を引用してリプライした。別に岩田さんや尾身茂氏を批判したわけではない。ところが、なにを勘違いしたのか岩田さんは、「『収束する』など首相もお見先生(筆者注・尾身茂氏のこと)も主張していないでしょ。噓つき」(2026/2/16)と、なぜか私のことを非難してきたのだ。
「嘘つき」は酷いですよ、岩田さん(笑)。あげく、「私は反ワクとは議論したくないのでこれでミュートします。では」(2026/2/16)と、一方的に対話を遮断した。いや、これに絡んできたのは岩田さんのほうなのだけど(苦笑)。
「主語を書かなかった」「正確な引用でなかった」から「嘘つき」と言いたいのだろうか。だが、社会に多大な影響力を持つ多くの人が「2回打てば集団免疫ができて、コロナが収束する」と国民に誤認させるような発信をしたのは確かだ。そうでなければ、重症化リスクの低い子どもや若者を含む8割もの人が2回接種することはなかったはずだ。尾身氏にしても、「集団免疫達成は難しい」との認識をはっきりと国民に示し始めたのは、多くの人がワクチンを打ってしまった2021年7月頃からだ(事実と異なるなら認識をあらためるので、教えてほしい)。(日本経済新聞「ワクチン接種率『6~7割』でも集団免疫難しく 尾身氏」2021年7月16日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA16DBZ0W1A710C2000000/)。
岩田さんは「『収束』するなど首相もお見さんも主張していない」と書いているが、少なくとも菅元首相は2021年5月28日夜、緊急事態宣言の延長を表明した記者会見で、はっきりと「収束」という言葉を使っている。その部分を引用する(たくさんの情報を教えてくれたニシムラテツヲさんはじめ、フォロワーさんに感謝します)。
「たとえ変異株であっても、対策に変わりはありません。感染を防止をし、収束へ向かわせる切り札がワクチンです。世界の国々でもその効果ははっきりと表れております」(産経新聞 菅首相記者会見詳報「感染を防止し、収束へ向かわせる切り札がワクチン」2021年5月28日 https://www.sankei.com/article/20210528-AJOPS4LCSVJUXO2DQUL6DTIONY/)。
「令和3年8月」の日付のある、首相官邸と厚生労働省が発行したパンフレット「新型コロナワクチンについて皆さまに知ってほしいこと」にも、2回の接種で高い効果が得られることと、世界の国々でコロナ収束への効果が現れていることが強調されている。
「新型コロナワクチンは、感染を防止し収束に向かわせる切り札です。/あなたが接種するコロナワクチン(メッセンジャーRNAワクチン)は、2回の接種によって、高い効果が認められています(*発症予防効果95%。なおインフルエンザワクチンの有効性は約40~60%)。接種が進む世界の国々では、コロナ収束への効果が現れています」(https://www.kantei.go.jp/jp/content/000085235.pdf
菅首相や河野大臣は「収束」だけでなく、「集団免疫」という言葉も使っていた。まず菅首相の発言から。これを読む限り、「集団免疫」という言葉を首相に吹き込んだのは、尾身氏ではないのだろうか。
「集団免疫というのは、まず、尾身先生に聞いて。専門家の先生があまり申し上げてないんですけども、そうした体制にはどんどんどんどんと近づいていくと、こういう風に思っています」(産経新聞 菅首相記者会見詳報「感染を防止し、収束へ向かわせる切り札がワクチン」2021年6月17日 https://www.sankei.com/article/20210617-SRRKUBDUUVM47HADKBVDTHVDVQ/)。
コロナワクチン接種推進の責任を負っていた河野大臣も、日本テレビの番組で「集団免疫」の獲得を目標として明言している。
「河野太郎ワクチン担当相は23日の日本テレビ番組で、政府が掲げる全希望者への新型コロナウイルスワクチン接種の10~11月の完了に合わせ、集団免疫を獲得することへの期待を示した。『10~11月に集団免疫を獲得できるよう、しっかり取り組む』と強調した」(産経新聞「11月までの集団免疫獲得を期待 河野担当相、希望者接種で」2021年6月23日https://www.sankei.com/article/20210623-W2NI64XMRVL3XENOSC6DJENQJQ/)。
政府だけではない。社会に大きな影響力を持つ有名な医師たちも、コロナワクチン接種によって集団免疫が達成され、コロナが終わるかのように語っていた。その例の一つとして、「反反ワク」活動に熱心だった、医師で小説家・知念実希人氏の発言を引用する。
「ワクチン接種というと、個々人の感染抑制や重症化防止のためと考える人が多いようですが、より重要なのは、7割以上の人が接種すれば、一定数の人が免疫をもつ『集団免疫』の状態がつくられる点です。そうすれば『免疫の壁』ができ、たとえ感染患者が出ても他の人に感染しにくくなる。新型コロナの流行が止むことで免疫を持たない人も感染から守られ、終息に向かうはずです」
「『アンチワクチン』デマに騙されるな 日本の医療を立て直せ」文藝春秋+2021年2月19日https://bunshun.jp/bungeishunju/articles/h2121)。
これも「デマ」だったとは言えないだろうか──公平を期すために、知念氏が2021年8月14日にXで、「残念ながらδ株の伝播性が高すぎ、完璧な集団免疫を構築するのは困難になってしまいました」との認識を示していることは書いておくが──こうした期待を煽る発信をしていたのは政府や知念氏だけではない。いまだに日本免疫学会のホームページを検索すれば、「ワクチン接種を広げることが新型コロナウイルス感染症制圧の鍵です」(https://www.jsi-men-eki.org/general/covid-19/)との記載を見つけることができる。他にも、多くの有名な医師・研究者や「反反ワク」活動をしている医クラたちが、このような発信をしていたのではなかったか。いちいち引用していたら大変だ。岩田氏と私のXでのやりとりに証拠が引用されているので、そちらを参照してほしい。
当初、多くの人がそのような認識を持ってしまったのは致し方ない面もある。それを殊更に批判したいわけではない。しかし、そのこと以上に、「ワクチンでコロナが収束する」と期待を煽りに煽り、8割もの国民に打たせたにもかかわらず、政府与党も医学界も知らんふりしていることに、私たちは怒っているのだ。彼らの言った通りにはならなかった。それどころか、接種前より接種後のほうが、「陽性者数」も「死亡者数」も増えてしまった。5~6兆円もの血税を注ぎ込んだにもかかわらずだ。政府与党も医学界も「猛省」して「謝罪」し、「責任」を取るのが当然ではないか。
そして岩田さんも、「『2回打てば集団免疫ができる』というのが反科学」と認めるならば、その批判は私たちではなく、確固たる科学的証拠がなかったにもかかわらず、無責任にも「反科学」的な期待を煽った政府与党や医師たちに向けるべきだ。少なくとも、私は「嘘つき」だの「反科学」だのと言われる筋合いはない。

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