Foomii(フーミー)

X(ツイッター)では言えない本音

鳥集徹(ジャーナリスト)

鳥集徹

#130 「コロナ」への猛省なくして「リベラル」なし ~「自由のジレンマ」と「不快な相手」を乗り越える智慧~

従前の予想どおり、自民党が圧勝して、中道が大敗。共産、れいわ、社民も議席を失い、リベラル左派勢力が自滅した。これに焦ったのか、X(旧ツイッター)では政治思想系インフルエンザーたちによる「なぜリベラル左派が嫌われたのか」「どうすればリベラルを再興できるのか」といった議論が盛り上がっている。このウェブマガジンでも主張してきた通り、戦後日本的リベラルには、捨ててはいけない価値がある。今回のリベラル左派の大敗がそれを見直す契機になるのなら、まさに「怪我の功名」と言えるかもしれない。

 

有名な政治思想系インフルエンサーたちの議論には学ぶところが多い。だが、私は強い不満も感じている。なぜなら、その議論の中で「コロナ騒ぎ」に対する反省があまりにも語られないからだ。彼らにとっては、いまさら蒸し返す意味のない「古い話」なのだろうか。あるいはコロナ騒ぎに加担した自覚があって、意図的に忘れようとしているのか。しかし、過剰なコロナ自粛やマスク、ワクチンの強要に抵抗してきた我々にとっては、いまだ「清算されざる過去」として拭い去れない大問題だ。ましてや「リベラル」を語るなら、素通りすることなど絶対に許されない。なぜなら、コロナ騒ぎの一連の問題は、まさにリベラル思想の根幹に深く関わるからだ。

 

そもそも「リベラル」という言葉が何を意味するのか。辞書をひけば「自由な」「自由主義の」「自由主義者」が第一義として出てくる。宗教、王権、伝統、因習、共同体等からの自由を意味するのか、あるいは国家権力や政府規制からの自由を意味するのか、政治思想的には様々な定義や解釈や立場があるだろう。だが、日本にいる私は戦後日本的リベラルが培ってきた歴史的経緯を踏まえつつ、いったん、「自由」「自由主義」「自由主義者」という、第一義的な意味に立ち戻るべきだと考えている。なぜならそれこそが、コロナ騒ぎで踏みにじられたものだからだ。

 

もし「リベラル左派勢力」が真の意味での「リベラル」であったならば、コロナの過度な自粛、マスク、ワクチン強要を厳しく批判して、徹底抗戦したはずだった。しかし、実際はまったく逆だった。「命を守る」という立場を鮮明にしたことは、リベラルの理念に照らして決して間違いだったとは言えない。だが、政府の感染対策の不徹底やワクチン供給の遅れ等を「批判の道具」にしたために、リベラル左派勢力は政府の対策を後押しする側に回ってしまった。結果として、「個人の自由を守る」というリベラルのあるべき姿と「矛盾」してしまったのだ。

 

公衆衛生上、どんなに自粛、マスク、ワクチンが有効で必要な措置だったとしても──私は有効だったとは全く思っていないが──民主的手続きを経て広く合意を得た法的根拠や高度な合理的判断に基づくものでない限り、個人の権利の制限は最小限に押しとどめ、「あなたの自由を徹底して守る」というのが、真のリベラルが貫くべき態度であったはずだ。だが、リベラル左派勢力はコロナ騒ぎに疑義を呈する人たちを守らなかった。つまりは、真のリベラル思想を「血肉化」していない「似非リベラル」だったということだ。

 

そのリベラル左派勢力の似非リベラルぶりに失望した人がいかに多かったことか。もちろん私もその一人だ。そして、その失望によって、大きく「右」へと舵を切り、参政党支持へ回った人が多かった。コロナ騒ぎに反対する多くの人たちとの交流を通じて、私はそのことを強く実感している。ちなみに、このウェブマガジンでも批判した通り、参政党の「創憲案」は復古主義的な思想を色濃く反映したもので、個人の自由や権利には全く無頓着な、リベラルとは程遠いものだ。だが、面白いことに第十一条(健康と医療)の2に限っては、参政党は完全に「リベラル」なのだ。

 

第十一条(健康と医療)の2

国民は必要な医療を選択する自由を有し、その選択を持って差別されない。

(「参政党が創る新日本憲法(構想案)」令和7年5月 参政党創憲チーム作成 https://sanseito.jp/new_japanese_constitution/

 

これこそまさに、リベラル左派勢力が言わねばならなかったことだ。今では前面に出さなくなったが、2021年から22年夏にかけて、世に出ようとしていた参政党が一番の売りにしたのは、「コロナワクチン批判」だった。その結果、22年夏の参院選で参政党は初の1議席を獲得し、得票率3%を超えて政党要件を満した。つまりは、コロナワクチンに疑問を抱く人が、国政政党を生み出すほどのボリュームで存在しているということだ。

 

だが、政治思想系インフルエンザーの多くが、参政党が非科学的な「スピリチュアル」「オーガニック信仰」の人たちを惹き付けたとしか分析できておらず、その中にリベラル左派勢力が捨てた価値観が「拾われていた」ことに気づいていなかった。文筆家の古谷経衡氏が、れいわ新選組の支持者の一部が参政党に流れたことを指摘しているが、まさに国家主義的な参政党が伸びたのは、リベラル左派がリベラルを血肉化していなかったことも、大きな要因の一つなのだ(古谷経衡『参政党と神谷宗幣 不安と熱狂の正体』祥伝社)。

 

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