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鳥集徹

#120【mRNAインフルエンザワクチン】従来より34.5%優越? ~ファイザー「65歳以上データ排除疑惑」のNEJM論文を読む~

世界で最も有力な医学誌の一つ『ニューイングランド医学雑誌』(NEJM/ New England Journal of Medicine )に、ファイザー社によって行われたⅿRNAタイプのインフルエンザワクチンの有効性を検証した臨床試験の結果が報告された。この試験は、各国の保健当局への承認申請のために行われる「治験」の最終段階(第3相試験)にあたる。果たして承認されて、来シーズンからmRNAタイプのインフルエンザワクチンが市場に投入されるだろうか。

 

論文のタイトルは〝Efficacy, Immunogenicity, and Safety of Modified mRNA Influenza Vaccine〟(修飾mRNAインフルエンザワクチンの有効性、免疫原性、安全性)。公開は2025年11月19日。なお、治験なので当然ではあるが、この臨床試験はファイザーの資金によって行われたもので、論文の著者として名を連ねる19人のうち14人がファイザーの研究者であることも付け加えておく(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2416779)。

 

米国の大手メディアは、この臨床試験の結果を肯定的に捉えているようだ。たとえば、米国3大ネットワークの1つNBCニュースが2025年11月20日付で、〝Pfizer's mRNA flu shot outperforms standard flu vaccine in late-stage trial  The Phase 3 trial found Pfizer’s mRNA shot cut flu-like illness by 34.5% compared with a standard flu shot.〟(ファイザーのmRNAインフルエンザワクチンが最終段階の試験で標準インフルエンザワクチンを上回る効果を発揮した 第3相試験では、ファイザーのmRNAワクチンが標準的なインフルエンザワクチンと比べてインフルエンザ様疾患を34.5%減少させたことが分かった)と見出しにして報じている(https://www.nbcnews.com/health/health-news/pfizers-mrna-flu-shot-outperforms-standard-flu-vaccine-late-stage-tria-rcna244814)。

 

「34.5%減少」という数字だけを見ると、確かにmRNAワクチンのほうが従来のワクチンより「優れている」と言えるだろう。ただし、この34.5%の根拠がNBCニュースでは報じられていないのだ。さらにmRNAワクチン接種群の方が副反応が多いという結果も出ているのに、これについても触れられていない。この点も含めて、今回の論文に何が書かれているのか、私なりに要約と考察をしてみた(なお免疫原性、すなわちワクチンによって引き起こされた免疫反応について記述されている部分については割愛する)。

 

この論文は、2022~2023年のインフルエンザシーズン中に、米国242ヵ所、南アフリカ5ヵ所、フィリピン1ヵ所で実施されたランダム化比較試験の結果を報告したものだ。計1万8476人の健康な成人(18~64歳)が解析の対象となり、mRNA群が9225人、対照群(不活化ワクチン群)が9251人だった。いずれも接種されたのは、そのシーズンに流行が予想された4タイプのウイルスに対応する「4価ワクチン」だ。それらを接種してから14日(2週間)以内に「インフルエンザ様疾患」と確定した患者の割合を比較。対照群に比べmRNA群で「インフルエンザ様疾患の割合が34.5%少なかった」というのが、今回の主要な結果だ。これに基づいて論文は、mRNAが従来に対して「非劣勢および優位性の両方の基準を満たした」と結論づけている。

 

ただ、肝心なのは、この「34.5%」という数字が、どんなデータから導き出されたかだ。論文によると、接種後2週間のうちにインフルエンザ様疾患を発症したのはmRNA群が57例、従来群が87例だった。これに基づいて「相対リスク減少率」を計算した結果、34.5%という数字が導きだされたわけだ(1-57÷87=0.345)。

 

では、これを「絶対リスク減少率」、すなわち全対象者(各9000人超)を母数にして計算し直すとどうなるか。インフルエンザ様疾患の発症率は、mRNA群が0.62%、対照群が0.94%となるので、絶対リスク減少率は0.32%(0.94-0.62=0.32)となる。つまり、mRNAワクチンの接種によって、従来のワクチンよりもインフルエンザ様疾患の発症率が0.32%減ったというのが、絶対リスクで見た効果ということになる。相対リスクで見た場合と大きく印象の変わることが分かる。

 

… … …(記事全文6,369文字)
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