… … …(記事全文6,427文字)高市早苗首相の「存立危機事態」答弁をきっかけに、日中関係が急激に悪化した。台湾有事が起これば日本が武力介入する可能性があると受け取った中国は「内政干渉だ」と激怒。答弁の撤回を求めて日本への渡航自粛や日本産水産物の輸入禁止を打ち出すなど、一つずつ制裁のカードを切っている。吉本のお笑い公演が中止になったのをはじめ、日本のアニメ映画や音楽ライブなどイベントの許可取り消しも相次いでいるようだ。
いくら過去の怨恨があるからといって、「頭を打ち割られ、血まみれになる」「汚い首は斬ってやる」といった中国側の激しい言葉遣いは度を越している。外交当局同士の協議を終え建物を出た際に、中国の局長がポケットに手を突っ込む姿の写真も出回り、多くの日本人の感情を逆なでした。Xには「無礼な態度」「中国の圧力に屈するな」「中国人観光客が減るのは結構」「これを機に中国依存から脱却を」といった言葉が飛び交っている。共同通信の世論調査でも「台湾有事での集団的自衛権行使に賛成」が48%に上った。
日本人の中に好戦的な人たちが増えているように感じる。ただ、こうした時こそ冷静にデータを見て、我々が何を為すべきかを考えたほうがいい。5年前の「コロナ騒ぎ」を思い出してほしいのだ。なぜ多くの人がウイルスの恐怖に駆られてしまったのか。それはデータを冷静に見れば無暗に不安がる必要はないと分かったのに、政府、医クラ、メディア等から発信された「緊急事態」を煽る情報に踊らされたからだ。そのために、なんと8割もの国民が安全性も有効性も定かでない未知のワクチンを打ってしまった。
今回もそれに似ている。我々は情動を揺さぶる表面的な情報だけを見て、拙速に言葉を繰り出すべきではない。それよりも今必要なのは、日本と中国がどんな状況に置かれているのか。とくに国力の差がどれほどあるのか。客観的な情報をできるだけ多く把握することだ。その際に我々が踏まえなければならないのは、欧米列強に追い詰められて日米開戦にまで至った84年前の出来事だ。あの時、米国との間には圧倒的な物量の差があった。しかし、それを分かっていながら、勇ましい声や希望的観測に押されて慎重論はかき消された。そして日本は悲惨な敗戦を迎えた。
その同じ轍を踏まないためにも、そしてコロナ騒ぎのような愚かなふるまいを繰り返さないためにも、日本と中国の国力の差を客観的に見ておく必要がある。そこで、両国の主な経済指標や戦力に関するデータを集め、比較してみた。それを見て読者のみなさんにも、我々が何を為すべきなのか、冷静に考えてみてもらいたい。
まずは経済力から。2024年のGDP(国内総生産:INF推計)は、日本が約4兆260億ドルなのに対し、中国は約18兆7480億ドルだ。かつて日本は米国に次ぐ世界第2位の経済大国だった。しかし、いまや世界第4位にまで落ち、2025年はインドに抜かれて5位になると予測されている。一方、中国は世界第2位の経済大国であり、日本の4倍以上の規模となっている。中国は2021年に不動産バブルがはじけ、内実はボロボロだといった希望的観測もある。しかし、2024年の中国の経済成長率は前年比5.0%なのに対し、日本は0.1~高い見積もりでも0.8%だ。日本のほうが経済状況は深刻であることを理解しておく必要がある。
次に貿易関係を見てみよう。2024年の日中貿易総額は約2926億ドル。日本にとって中国は最大の貿易相手国となっている。一方、中国にとって日本は米国、韓国に次ぐ3番目の貿易相手国だ。そして収支は22年から24年まで3年連続で日本側の赤字となっている。日本から中国に輸出している品目で大きいものは、「半導体等製造装置」「半導体等電子部品」「プラスチック」。一方、中国が日本へ輸入しているのは「通信機」「電算機類」「衣類等」。つまり、日本から製造装置や部品を供給して、中国で組み立てるという密接な関係のあることが分かる。最近では中国は、「電気自動車(EV)」「リチウムイオン電池」「太陽光パネル・関連部材」の〝新三品〟が全輸出額の2割を占めるようになっている。
こうした関係の中で、大きな「中国リスク」になると言われているのが、ご存じの通り〝レアアース(希少金属)〟だ。ネオジウムやセリウムといったレアアースは、電気自動車やハイブリッド車、液晶ディスプレー、スマートフォン、LED、医療機器など、ハイテク機器の製造に欠かせない原料となっている。中国はレアアース世界生産量の7割を占めており、相手国との交渉で輸入規制を切り札に使うことが警戒されている。現実に2021年、尖閣諸島での日中漁船衝突事件をきっかけに中国がレアアースの輸出をストップし、自動車など日本の製造業に大きなダメージを与えた。今回もその再来がないとも限らない。レアアースの中国依存から脱却するため、政府は南鳥島沖などで試掘を始めているが、成功するまでには時間がかかりそうだ。
もう一つリスクになりそうなのが、中国に3万以上もあるとされる日系企業の関連施設だ。中国の日系企業は日中関係が悪化するたびに、反日デモのターゲットとされてきた。2012年、日本政府による尖閣諸島の国有化に抗議する中国の反日デモが拡大し、日系企業の工場での出火や自動車販売店の放火が相次ぎ、日系百貨店やスーパーなども破壊や略奪に遭った。今回も日中対立がエスカレートすれば、反日デモの攻撃対象となるだろう。中国政府はそれを民衆の不満のガス抜きに使う可能性もある。また、10万人近くいる中国在留日本人が危険に晒される他、スパイ容疑など冤罪で逮捕される日本人が相次ぐ危険性もある。

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